F5、“アプリケーション”にフォーカスした統合プラットフォームで複雑さを克服

渡邉利和

2025-05-21 15:22

 F5ネットワークス ジャパンは5月20日、AI時代に向けた事業戦略と、その実行を担う新たな最高技術責任者(CTO)の就任について説明会を開催した。

F5ネットワークス ジャパン カントリーマネージャー 木村正範氏
F5ネットワークス ジャパン カントリーマネージャー 木村正範氏

 まず概要説明を行った同社のカントリーマネージャーの木村正範氏は、同社が創業以来掲げている「全ての人々が快適、安全にアプリケーションを利用できる世界を目指す」というミッションを改めて紹介し、「アプリケーションを利用するユーザーが、より快適に、よりセキュアに利用できる」ことに一貫して取り組んできたと強調。「F5の製品やソリューションの進化は、アプリケーションのランドスケープがどうなっているか、その変化に伴って変わっていく」とした上で、最近のアプリケーションを取り巻く動向の変化として「ハイブリッドマルチクラウド」と「AIの発展」を挙げ、これらの変化に対応するソリューションの提供に注力しているとした。

 同氏は、同社のユーザーを対象とした調査結果として、ユーザー企業がアプリケーションをどこに置いているかというデータを紹介した。ハイパースケーラーとして最多となったAmazon Web Services(AWS)でも15%にとどまるのに対し、従来型のデータセンターが21%、プライベートクラウドが23%となっており、単純なクラウド移行ではなくオンプレミスと複数のクラウドを組み合わせた「ハイブリッドマルチクラウド」環境が主流となっていることを示した。

アプリケーション配置環境の複雑化。右の図中の数字は、F5のグローバルのユーザー企業に聞いたアプリケーションの配置場所のデータで、まだまだオンプレミスが多数なことに加え、各ハイパースケーラー間の差が縮小しており、分散化の傾向が強まっている点がポイント
アプリケーション配置環境の複雑化。右の図中の数字は、F5のグローバルのユーザー企業に聞いたアプリケーションの配置場所のデータで、まだまだオンプレミスが多数なことに加え、各ハイパースケーラー間の差が縮小しており、分散化の傾向が強まっている点がポイント

 同社は従来、企業アプリケーションの前段に置いてアクセス遅延などを防ぎ、快適なアクセスを実現するソリューションとして、ハードウェアアプライアンスの負荷分散装置(ロードバランサー)「BIG-IP」を提供していたが、クラウドシフトなどの環境変化を受けてさまざまな形態のソフトウェアソリューションを柔軟に選択できる形に変化している。

 中核となるプラットフォームとしては、BIG-IPに加え、クラウドサービス「Distributed Cloud Services」やオープンソースソフトウェア「NGINX(エンジンエックス)」を目的に応じて選択可能とし、さらにハードウェアの形からVM、コンテナー、SaaSなどさまざまな提供形態で、ロードバランシングなどのアプリケーションデリバリーの機能や各種セキュリティ機能などを提供する。同社はこれを統合プラットフォーム「Application Delivery and Security Platform」と位置付け、さらにADC(Application Delivery Controller)3.0への進化を果たしたとしている。

F5の統合プラットフォームの全体像
F5の統合プラットフォームの全体像
F5ネットワークス ジャパン CTO-Japan 丸瀬明彦氏
F5ネットワークス ジャパン CTO-Japan 丸瀬明彦氏

 次に木村氏は、「複雑化するIT環境に直面するユーザー企業のITリーダーの方々に伴走していくための組織強化」の一環として、日本法人の新たなCTOとして丸瀬明彦氏が就任したことを紹介し、同氏がユーザー企業各社のリーダー層としっかりコミュニケーションを取っていくことに期待を寄せた。

 続いて登壇した丸瀬氏は、CTOという役職がF5の社内には2種類あると説明した。「開発/エンジニアリングの部隊にいる本社のCTOで、Chief Innovation Officerとも言われて開発・エンジニアリングのリソースを全て持っているCTOと、Field CTOと呼ばれる営業組織に入っているCTOが各リージョンに1~2人いる」とし、同氏はAPCJリージョンに2人いるField CTOのうちの1人だとした上で、自身の役割について「AIの需要とともに複雑化するハイブリッドマルチクラウド環境には、各インダストリー共通の課題が見えている。その答えを業界唯一無二のF5アプリケーションデリバリーとセキュリティのプラットフォームにて横断的に統合解決する道を指南する」と紹介した。

 丸瀬氏はさらに具体的な提案例として、AIアプリケーションに求められる低遅延なレスポンスを実現し、さらにエッジに展開したGPUなどの演算リソースを有効活用するために役立つデータ処理ユニット(DPU)向けの各種ソフトウェアコンポーネントを説明した。これは企業におけるAI活用の促進に役立つとしている。

DPUの活用例。たとえばモバイルキャリアが基地局にAI処理のためのGPUを配置し、空き時間に他のAIアプリケーションに使わせるといったアイデアがあり、その際に基地局に同時に配置されたDPU上でアプリケーション処理を実行することでリソースを効率的に活用できる。同社では既にDPU向けのソフトウェアを開発しており、こうした用途に対応可能だという
DPUの活用例。例えば、モバイルキャリアが基地局にAI処理のためのGPUを配置し、空き時間にほかのAIアプリケーションに使わせるといったアイデアがあり、その際に基地局に同時に配置されたDPU上でアプリケーション処理を実行することでリソースを効率的に活用できる。同社では既にDPU向けのソフトウェアを開発しており、こうした用途に対応可能だという

 ほかにも、AIに関連して懸念されるさまざまなセキュリティリスクに対処するための同社のソリューションである「F5 AI Gateway」についても紹介した。

F5 AI Gatewayの概要。AIに関連するさまざまなセキュリティリスクに対応する機能を備える。「プロセッサ」は同社独自の用語で、意味としては特定の処理を実行するためのオプションのソフトウェア・モジュールと考えて良い。実態としてはコンテナの形態で提供され、現状はF5が提供するものの他、ユーザー企業が独自に開発することも可能だという
F5 AI Gatewayの概要。AIに関連するさまざまなセキュリティリスクに対応する機能を備える。「プロセッサ」は同社独自の用語で、意味としては特定の処理を実行するためのオプションのソフトウェアモジュールと考えていい。実態としてはコンテナの形態で提供され、現状はF5が提供するもののほか、ユーザー企業が独自に開発することも可能だという

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