ソフォス、セキュアワークス買収による事業戦略を発表

國谷武史 (編集部)

2025-05-22 14:08

 セキュリティ企業のSophosは5月22日、都内で記者説明会を開催し、Secureworks買収に伴う事業戦略や製品・サービスロードマップ、日本での展開などを発表した。両社の統合の推進や日本でのサービス強化などを図る。

戦略を説明したSophos アジア太平洋地区担当シニアバイスプレジデントのGavin Struthers氏(左)、プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのRob Harrison氏(右)、ソフォス 代表取締役社長の足立達矢氏(中央)
戦略を説明したSophos アジア太平洋地区担当シニアバイスプレジデントのGavin Struthers氏(左)、プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのRob Harrison氏(右)、ソフォス 代表取締役社長の足立達矢氏(中央)

 Sophosは1985年に創業し、英国に本社を構える。2024年の売上高は約15億ドル、エンドポイントセキュリティソフトやファイアウォール機器を中心に広範なポートフォリオを構える。総顧客数は約60万社で、特に拡張型脅威検知・対応(XDR)の導入が約4万5000社、マネージド型脅威検知・対応(MDR)が約3万社に上るという。

 同社は、2024年10月に米Secureworksを約8億5900万ドルで買収すると発表(関連記事)し、2025年2月に完了した。Secureworksは、大企業向けのXDR/MDR基盤「Taegis」やセキュリティの運用監視、コンサルティングのサービスを主力とする。買収の目的は、成長領域のXDR/MDRの強化と大企業顧客層の獲得になる。

 説明会の冒頭では、まず日本法人ソフォス 代表取締役社長の足立達矢氏が、2024年度の国内ビジネス状況を紹介。ファイアウォール機器の他社からの乗り換えが50%増、エンドポイントセキュリティソフトの販売が20%増、XDR/MDRの販売は80%増となり、国内パートナーからの案件が5万4700件、2025年度の新規案件も同日時点で1万1500件と報告した。

 足立氏は、広範な製品・サービスのポートフォリオとコストメリットに優れる特徴が国内顧客に支持されているなどと説明する。また、Secureworks買収に伴い日本の組織体制も強化。日本法人のセキュアワークスは継続となっているが、代表取締役社長を務めた廣川裕司氏が新たにエグゼクティブアドバイザーに就任している。

 2025年度(2026年3月期)の国内事業の基本方針は、(1)世界最高レベルのサイバーセキュリティの提供、(2)XDR/MDR売上の前年比2倍増、(3)新規やクロスセル、アップセルの実績の1.5倍増――を掲げる。主な施策として、両社の組織・製品・サービスの統合推進や国内リソースによるMDRの提供、パートナー協業体制のさらなる強化、マーケティング/広報活動の強化による市場認知の向上を図っていくとした。

2025年度の日本の事業戦略
2025年度の日本の事業戦略

 またグローバルでの事業戦略をSophos アジア太平洋地区担当シニアバイスプレジデントのGavin Struthers氏、製品戦略をプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのRob Harrison氏がそれぞれ説明した。

 Struthers氏は、法人顧客がセキュリティ脅威の複雑化・高度化、専門人材の不足、マルチベンダーでの複雑なセキュリティソリューションの運用負荷の拡大といった課題を抱え続けていると指摘し、これらの解決に向けて(1)仮想最高情報セキュリティ責任者[バーチャルCISO]の提供、(2)プラットフォーム展開、(3)ハイブリッド型運用、(4)チャネルパートナーによる規模拡大――の4つに注力しているとした。

 特に(1)では、米国立技術標準局「サイバーセキュリティフレームワーク」(NIST CSF)の「識別・防御・検知・対応・復旧」に基づくソリューション提供に加え、法人顧客の経営層によるサイバーセキュリティへの取り組みを支援すべく、バーチャルCISOをコンセプトにガバナンスの観点からも顧客のCISO支援を強化する。(2)では、顧客のセキュリティシステムが平均でベンダー10~15社・ソリューション45~60種類で構成されているという実態を踏まえ、統合運用基盤「Sophos Central」を中心とするSophosプラットフォームの活用を訴求していくとした。

 Secureworksとの統合においては、(1)従来価格での提供の継続、(2)既存製品・サービス水準の維持と向上、(3)両社の日本でのリソース拡大、(4)日本市場への継続的な投資――を基本にするとした。(4)では、これまで国内データセンターに数百万ドル規模の投資を実施し、「日本の顧客のデータ主権を日本で担保できるようにしている」(Struthers氏)という。

Secureworks統合での基本方針
Secureworks統合での基本方針

 Harrison氏は、今後のロードマップでエンドポイントセキュリティソフトへのTaegisの統合、「アイデンティティーアドバイザリー」機能の提供、TaegisとSophos Centralによるプラットフォーム統合、継続的な新製品投入に取り組むと説明した。

 また、AI機能を拡充し、(1)生成AIによる要約やコマンド分析、自然言語検索によるセキュリティ運用担当者の業務効率化、(2)XDRやエンドポイントセキュリティソフト、ファイアウォール製品への対話型AIアシスタントの搭載、(3)脅威ハンティングや自動トリアージ(優先順位付け)、コンプライアンスのためのエビデンス収集によるセキュリティ運用の自動化――を段階的に進めていくとも話した。

製品ロードマップ
製品ロードマップ

 Harrison氏は、広範なポートフォリオやSophos Centralプラットフォーム、数十万社が利用するMDR/XDRを通じた膨大なセキュリティインテリジェンスが同社の強みであり、さらにAIによって顧客の保護が強化されていくとも述べた。

 なお、Secureworksは、他社のセキュリティ製品もサポートしている中立性を特徴としていた。Sophosによる買収でそれが失われかねないとの懸念に対しHarrison氏は、「あまり知られていないが、そもそもSecureworksを買収する以前からSophos単体でMicrosoft製品などをサポートしている。Secureworksを統合してもそれは変わらない」とした。

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