調査

国内セキュリティソフトウェア市場、2029年に1兆円超--IDC調査

寺島菜央 (編集部)

2025-05-27 15:06

 IDC Japanは5月26日、国内セキュリティソフトウェア市場の実績と予測を発表した。これによると、セキュリティソフトウェアのグローバル売上額は2024年(2024年1~12月)に2023年同期比15.5%増の1178億米ドル。国内市場は、同14.6%増の5861億100万円になったと推定している。

 IDCは、2024年の国内セキュリティソフトウェア市場について、サイバー攻撃による被害の急激な増加と、それに伴う経営者の意識変革、AIや生成AI活用の課題浮上などによって国内企業のセキュリティソフトウェアへの投資を促したとみている。

 2024年は特にランサムウェア攻撃による被害が多発したことで、攻撃手法や感染経路の分析結果から企業の情報セキュリティに対する課題がより具体的になり、投資につながったとしている。また、従来からの課題であるセキュリティ運用における人材やスキル不足の解決にAIや生成AIを活用する動きが現実的になり市場成長を支えたとみる。

 セキュリティソフトウェア市場のトレンドをけん引した主要な機能として、「Endpoint Point Security Software」「Identity and Access Management」「Security Analytics Software」――の3つの市場を挙げている。

 Endpoint Point Security Software市場は、セキュリティソフトウェア市場の約3割を占め、2023年比10.1%増の1734億3100万円となった。主にEDR分野が同22.8%成長し、市場をけん引したという。エンタープライズ層へのEDR導入は一巡したが、中小企業向けにEDRや運用サービス、セキュリティオペレーションセンター(SOC)などをパッケージ化した製品やサービスなどが成長を支えたとしている。

 Identity and Access Management市場は、同15.8%の1125億750万円となった。ランサムウェアの実際の攻撃(データ奪取)までのステップが分析され、ID管理と認証、アクセス管理で機密情報を守るソリューションへのニーズが高まったという。また、マルチクラウドやSaaSなどの利用の増加に伴い、ID管理がサイロ化したライフサイクル管理やアクセス権の正当性チェックなど、工数が増加していることも市場の成長につながったとする。

 Security Analytics Software市場は、同22.9%増の856億2435万円となった。個々のセキュリティツールから上がるさまざまなログやアラート、異なるリスクレベルの理解と対応など、オペレーションの煩雑化が課題となっている。これらを解決するソリューションとして、AIを使ったアラートの自動判定や自動対応などを可能とするソリューションに注目が集まった。また、高度化する攻撃に対する専門的な分析と洞察を提供するThreat Intelligence(脅威インテリジェンス)や、脆弱(ぜいじゃく)性を突いた攻撃の多発を受け、Vulnerability Management(脆弱性管理)などの分野がともに2023年対比40%を超えた。

 IDCは、セキュリティソフトウェアへの投資は継続して同レベルで成長すると予測している。国内セキュリティソフトウェア市場の2024~2029年の年間平均成長率は12.0%で成長し、2029年には1兆307億2700万円に達するとみている。成長の要因としては、企業の競争力を高める生成AIの活用と、それを支えるセキュリティ基盤としてのID管理と認証、アクセス管理、データセキュリティなど。

 他方、トランプ関税の影響はICT分野において軽微にとどまると予測しており、特にセキュリティ市場において世界情勢の緊張はサイバー攻撃への備えと対策強化を促し、市場成長の要因になる可能性があると捉えている。

 IDC JapanのSoftware リサーチマネージャーである西村真弓氏は「ユーザー企業は最新のサイバー攻撃の状況や自社のリスクを把握し、常にリスクに備え運用していく必要がある。攻撃に備える対策の優先順位を見極め、迅速かつ効率的に投資するとともに、限られたリソースを適切に配分し、自動化を取り入れセキュリティの運用の効率化を図り正常な状態を保つことが必要だ。その上で、デジタルトランスフォーメーション(DX)化やデータドリブン経営、AI/生成AI活用などビジネス競争力を高めることが望ましい」と述べた。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]