IIJ、白井DCCに「水冷Ready」第3期棟着工--省エネ実現する空調システムも披露

加納恵 (編集部)

2025-05-28 10:24

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、データセンター「白井データセンターキャンパス」(千葉県白井市)に新たに3期棟を増設する。6月1日の着工を前に、5月27日に起工式と地鎮祭を行ったほか、既存棟である1期棟、2期棟の見学会を開催した。

3期棟の完成イメージ。
3期棟の完成イメージ。
地鎮祭の様子。IIJ 代表取締役会長執行役員の鈴木幸一氏、建設を担う清水建設 代表取締役社長の新村達也氏らが出席した。
地鎮祭の様子。IIJ 代表取締役会長執行役員の鈴木幸一氏、建設を担う清水建設 代表取締役社長の新村達也氏らが出席した。

 白井データセンターキャンパスは、2019年に1期棟、2023年に2期棟を開設。拠点となる千葉県白井市は、地盤が強固で、地震や土砂災害、津波などのリスクが低いとされ、数多くのデータセンターが集積する地域の1つになる。

 敷地面積4万平方mの中に1期、2期のサーバー棟、管理棟を構え、3期棟は2026年春の運用開始を目指す。既存棟は、外気を取り入れて直接サーバーを冷却する「直接外気空調」を採用していることが特徴で、これにより、従来型のデータセンターに比べ、消費電力を40%削減する。

 IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 データセンター サービス部 白井データセンターキャンパス センター長の加藤佳則氏は「エアコンではなく、換気扇でサーバーを冷却しているイメージ。さすがに夏場はエアコンを使っているが、真夏以外は換気扇で十分な冷却ができる」と説明する。

 この直接外気空調は、IIJが独自に開発した手法。季節によって気温が異なる日本でも消費電力が抑えられるよう、夏場は直接外気空調と空冷式のハイブリッド、冬はサーバーの排気と外気を混合する方式を採用することで、効率的な運用を実現する。

 3期棟は、直接外気空調を採用しながら、水冷設備に必要な専用熱源スペースや冷水配管ルートを確保した「水冷Ready設計」を採用する。AI用途のGPU搭載サーバーなど、発熱量が高いIT機器の利用を見据える。

 IIJ 代表取締役社長執行役員兼共同最高経営責任者(Co-CEO) & 最高執行責任者(COO)の谷脇康彦氏は「1期棟、2期棟と順次増設してきたが、2期棟も既に満床の状況で、データセンターに対するニーズそのものが非常に高まっている。その次のステップとして3期棟を建設する。クラウドサービスなどの需要に加え、最近ではAIに対する需要が高まっている。新しい3期棟を作ることでこの需要に応えていきたい。3期棟は、基本的にIIJが提供している自社サービスに使うことを前提にしている」と3期棟の役割を話した。

IIJ 代表取締役社長執行役員兼共同最高経営責任者(Co-CEO) & 最高執行責任者(COO)の谷脇康彦氏
IIJ 代表取締役社長執行役員兼共同最高経営責任者(Co-CEO) & 最高執行責任者(COO)の谷脇康彦氏

 水冷Ready設計を採用した経緯については「基本的に空冷方式で熱を抑えてきたが、この方式は限界が近づいている。次のステップとして考えられるのはやはり水冷。3期棟が実際に水冷を導入する時期は、今後検討が必要になるが、すぐに導入できるような取り組みはやっていきたい。目指すべきなのは、データセンターでの消費電力をいかに減らすか。そして、高密度なデータセンターを作っていくかということ。環境に配慮していくためには、今の時点で日本で最も良いレベルの電力使用効率(PUE)に挑戦してきたい」(谷脇氏)とした。

 一方で、地元となる白井市との関係について問われると「データセンターの建築、運用にはいろいろなルールがあり、これを満たしていくのは当然のこと。私たちは地域コミュニティーの一員であるため、地域の皆さまのご要望を丁寧に聞きながら(運用を)進めていきたいと思っている。白井市とは協定のような形で、学生の方にデータセンターを見学してもらったり、インターネットの仕組みを理解できるような教室を開いたりしている。加えてIoT農業の分野で実験の現地出向くなどの連携もしている。こうした取り組みは今後も継続していきたい」(谷脇氏)とし、地域との関係を築く。

 3期棟は、エリア敷地面積約5400平方mで、受電容量は10MW(25MWまで拡張可能)。1000ラック規模になる計画だ。

「白井データセンターキャンパス」の全体図。

「白井データセンターキャンパス」の全体図。

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