松岡功の一言もの申す

AIエージェントは企業にどう入っていくのか--ガートナーに聞いてみた

松岡功

2025-05-29 10:45

 業務の生産性を大きく向上させる可能性がある「AIエージェント」。今最も注目されている中でITベンダー各社からさまざまなソリューションが提供されているが、ユーザー視点で見た場合、企業へ実際にどのように入っていくのか。その議論が意外に抜け落ちているように思うので、Gartnerへの取材を通じて解き明かしていきたい。

ユーザー視点でのAIエージェントの導入形態とは

(写真1)取材に応じるGartnerのPieter den Hamer氏
取材に応じるGartnerのPieter den Hamer氏

 そんな問題意識を持って話を聞いたのは、GartnerのバイスプレジデントでAI分野に精通したアナリストのPieter den Hamer(ピーター・デン・ハーマー)氏だ。ガートナージャパンが先頃都内ホテルで開催した「ガートナー データ&アナリティクス サミット」で講演するために来日したのを機に、取材の機会を得た。

 Hamer氏は講演で、まずAIエージェントの定義について、「デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する、自律的または半自律的なソフトウェア」と述べた。中でも「状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし」と「自律的または半自律的な」という表現がポイントとのことだ。

 企業はAIエージェントをどう使い始めればよいのか。同氏は図1を示しながら、「当初は、パッケージ型のエージェントプロダクトから自社の業務に効果的なものを採用するのがいいだろう。例えば、『Microsoft Copilot』のような汎用(はんよう)エージェントや『Salesforce Agentforce』のような業種別エージェントだ。そこから適応範囲を広げていく際には、図の下側(氷山の水面下)に記したさまざまなエージェントのテクノロジースタックが必要になってくる」と説いた。

(図1)企業のAIエージェント活用段階(出典:「ガートナー データ&アナリティクス サミット」講演資料)
(図1)企業のAIエージェント活用段階(出典:「ガートナー データ&アナリティクス サミット」講演資料)

 また、企業の中でのAIエージェントの在りようについては図2を示しながら、「当初(現在のAI)は、業務ごとのエージェントを個別に使い始める形から始まるだろうが、そこから(未来のAIは)それらを連携しオーケストレートさせて業務全体の生産性を向上させるために、エージェントを活用する『環境』作りが行われるようになるだろう」との見方を示した。

(図2)現在のAIと未来のAI(出典:「ガートナー データ&アナリティクス サミット」講演資料)
(図2)現在のAIと未来のAI(出典:「ガートナー データ&アナリティクス サミット」講演資料)

 これらの話は、この後にも関わってくる内容なので、それぞれ図を示して先に紹介しておく。

 そして、講演後の取材。筆者がHamer氏にぜひとも聞きたかったのは、「AIエージェントは企業にどのような形態で入っていくと見ているか。個々の従業員が帯同するパーソナルエージェントが起点になって業務や業種ごとのエージェントとつながっていくのか。それとも人(従業員)が業務や業種ごとのエージェントと必要に応じて直接やりとりしていくのか」ということだ。ちなみに、ここで言うパーソナルエージェントは先述の汎用エージェントの進化形を想定しているが、今後、違った形で出現する可能性もあるだろう。

 この質問をした意図は、企業がAIエージェントによって業務全体で生産性を上げるためには、どのような導入形態がふさわしいかというのが、冒頭で述べたユーザー視点での疑問を解くカギになると考えたからだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]