いまや企業におけるデジタル活用の高度化は不可欠であり、それに伴い、企業のソフトウェア開発はかつてない速度と効率性が求められています。限られた人的リソースでビジネスニーズに迅速に応える開発を実現するため、今後重要な存在となるのが「AIエージェント」です。今回は、開発者がより迅速に、より豊かな発想力を持ち、大規模な開発やより安全なコードの記述ができるようを支援するAIエージェントの可能性と、それがソフトウェア開発にもたらす変化について紹介します。
AIエージェントの活用が始まった開発現場
日本におけるソフトウェア開発の現場では、成果物の品質に対する高い要求に応えるため、多層的かつ網羅的なテストとレビューを実施するという独自の開発スタイルやカルチャーが育まれました。それにより、安定性と信頼性に優れたソフトウェアを生み出してきたことは、日本のソフトウェア開発の大きな強みと言えます。
しかしながら、現在の開発現場はさまざまな課題に直面しています。特に古い技術のまま使われ続けるレガシーシステムの維持、旧式の開発ツールやプラットフォームによる技術リソース上の制約、ビジネスの変化への柔軟な対応を難しくする開発内製化の遅れといった技術的な課題の解決は急務です。また、生産年齢人口の減少による労働力不足、現場に必要な新技術の習得が追い付かないスキルギャップといった人的リソース面の課題も見逃せません。
これらの課題を解決するには、新たな技術と人材への投資が不可欠です。例えば、AIを活用したソフトウェアのモダナイゼーション、システム移行に伴うコード生成の自動化、あるいはスキルアップ/リスキリングによる人的リソース強化などへの積極的な投資を推進し、課題解決を実現するわけです。
AIコーディングツールは、既に日本の開発者や企業のコーディングの高速化と効率化に貢献しており、企業が競争力を維持するために必要な生産性の向上を促進しています。実際、「GitHub Copilot」 を使用している開発者は、生産性が最大55%向上したと報告しています。パナソニックコネクト、富士通、ZOZOなどの企業は、既にこのツールを使用してソフトウェア開発の方法を改善し、イノベーションを加速しています。
最近のAIエージェントの台頭により、AIコーディングツールがもたらすメリットはさらに拡大し、ソフトウェアの開発方法に大きな変化をもたらしています。例えば、筆者が所属するGitHubは、AIエージェントがもたらす生産性向上の効果を活用した、複数のAI駆動のツールや機能を導入しています。これらには、「Visual Studio Code」(VS Code)上の「Copilot」のエージェントモード、「Copilot Workspace」、そして最近では、Copilot をGitHubに直接組み込んだ強力なコーディングエージェントであるGitHub Copilot コーディングエージェントがあります。
GitHub Copilotは、AIエージェントとして、GitHub内でコードのテスト、反復、改善を実行し、開発者はルーティンワークや専門的な作業をAIエージェントに任せてプロジェクトを推進することができます。