企業のソフトウェア開発の現場は、エンジニア不足などの課題に直面しているケースが見られる一方、生成AIをベースとしたAIエージェントの活用が普及し始め、大幅な生産性向上が可能になりました。いまやAIは、単なるコーディングの支援だけでなく、開発工程全体に関与する存在です。そのような中で人間の開発者は、どのように変わっていくべきでしょうか。今後の開発者のあるべき姿とソフトウェア開発に求められる構造転換について解説します。
日本の開発現場における生成AI活用の実際
生成AIは、業務効率化を実現する最先端技術として注目されていますが、実際に日本企業の導入・活用はどの程度進んでいるのでしょうか。
総務省がまとめた「令和6年 情報通信白書」によると、生成AIを活用する方針の日本企業は4割強にとどまっており、これは8割以上の企業が活用方針を策定している米国・ドイツ・中国と比較して約半数という結果です。生成AIの導入意欲についても非常に慎重であり、国内外のシンクタンクやコンサルティングファームは、5~6割の日本企業が信頼性に懸念を示すという調査結果を公表しています。
一方で、筆者が所属するGitHubでのユーザーの利用状況を見る限り、ソフトウェア開発における生成AIの活用は確実に拡大しつつあります。日本におけるGitHubの生成AIプロジェクトに貢献する開発者コミュニティーの規模は前年比35%増、世界第6位まで拡大しました。日本のオープンソース AIプロジェクトへの貢献度は、前年比50%増となり、世界第7位へと成長を遂げています。
このように日本のソフトウェア開発現場では、生成AIの活用が既に始まっており、開発者の働き方を変えようとしています。GitHubの調べでは、「GitHub Copilot」をはじめとする生成AIをコーディング支援ツールとして利用しているソフトウェア開発現場では、55%以上の生産性向上が実現されていることが明らかになりました。
生成AIの進化・発展は、開発者の働き方だけでなく、ソフトウェア開発の在り方自体を大きく変えようとしています。従来の開発工程では、開発者自身がコードを記述するとともに、実装・レビュー・ドキュメント作成といった一連の作業を全て手作業で行うことが通例でした。
これらの作業を補完、あるいは自動化する生成AIを一部導入することで、1日当たり平均2時間、最大4時間も開発工程にかかる時間を短縮したケースも確認されています。現場の限られた人員・時間・予算などのリソースで開発生産性を最大化するために、生成AIがさらに広く活用されていくことは間違いないでしょう。