NTTとSBIホールディングスは5月29日、社会の発展を目指すパートナーという位置付けの下、資本業務提携契約を結んだと発表した。併せて、NTTドコモによる住信SBIネット銀行の公開買い付けについても決定した。

NTT 代表取締役社長の島田明氏(中央右)、SBIホールディングス 代表取締役 会長 兼 社長の北尾吉孝氏(中央左)、住信SBIネット銀行 代表取締役社長の円山法昭氏(右)、NTTドコモ 代表取締役社長の前田義晃氏(左)
今回の資本業務提携は、デジタル社会において、多様化する顧客ニーズに応えるため、両グループの強みを結集し、金融領域を中核にさまざまな領域でのサービスを提供することで、社会の発展とユーザーへの利便性向上に寄与するという目的で実施するもの。業務提携開始は7月17日を予定している。NTTは、SBIホールディングスが実施する第三者割当増資の引き受けにより、SBIホールディングスの普通株式2700万株(約1100億円)を取得し、両グループの資本業務提携の基礎にする。
NTT 代表取締役社長の島田明氏は「SBIホールディングスは、金融領域を中心にさまざまな事業領域において豊富な実績と知見を有する企業グループ。NTTグループとの提携を通じ、デジタル技術と金融サービスを融合させ、革新的なサービスを市場に提供していきたい」と提携について説明した。
NTTドコモが買収する住信SBIネット銀行は、インターネット専業銀行として開業。2015~2024年度における年平均成長率(CAGR)は、14.0%を達成するなど、成長を遂げてきた。

住信SBIネット銀行の経常利益の推移
SBIホールディングス 代表取締役 会長 兼 社長の北尾吉孝氏は「なぜ売却するかというと、NTTが非常に強い関心を示されたから。ただ、単純に売却してしまうとここまで一緒にやってきたパートナーである三井住友信託銀行などとの縁も切れてしまう。それでは困るので、私たちの株式をNTTに保有していただき、この関係を持ち続け、業績の継続的な向上に寄与したいと考えた。これは売り主として、買い主に対する責任」と経緯を話した。
銀行領域に参入するNTTドコモは、(1)より便利でお得な金融サービスの提供、(2)データ活用によるお客さまの理解を通じた、最適なサービス提案、(3)顧客基盤の強化、(4)金融事業の成長加速――と4つの「参入を通じて実現したいこと」を打ち出す。

ドコモが銀行業への参入を通じて実現したいこと
中でも(3)の顧客基盤の強化については、NTTドコモにおける記入サービス全体の顧客数増大を目指し、新たな銀行サービスと既存のドコモのサービスを組み合わせていく考えを示す。また(4)の金融事業の成長加速では、銀行口座や預金の獲得にNTTドコモの販売チャネル活用していくことで、NTTドコモグループとしての金融事業の成長につなげる。
なお、NTTドコモは最終的に住信SBIネット銀行の株式65.81%を取得し、議決権比率は三井住友信託銀行と50%ずつ保有していくとのこと。2025年第3四半期以降に連結子会社化する予定だ。

連結子会社化にかかる取り引き概要と今後のスケジュール
住信SBIネット銀行は、2015年にオープンAPIを実現し、モバイル、クラウド、AI、高度なセキュリティなどの分野に注力するなど、テクノロジーに対し積極的な投資をしてきた金融機関になる。
住信SBIネット銀行 代表取締役社長の円山法昭氏は「優れたテクノロジーとSBIグループ、特にSBI証券との強力なシナジーにより、顧客基盤、預金を増やしそれを住宅ローンという形で運用する、非常にユニークなビジネスモデルを構築してきた」と強みを話す。
しかし「それだけでは巨大な経済圏を持っているライバルには勝てない。私たちも巨大な経済基盤を築く必要があり、そのための取り組んできたのがオープンプラットフォームである『BaaS(Banking as a Service)』になる。これにより、あらゆる企業、産業を銀行に変えるビジネスモデルを実現した。これが成長ドライバーとなっていたが、昨今はほかのメガバンクもこの領域に本格参入するという報道が少なくない。次の一手を考える中で、今回の提案があったことは非常によいタイミングだった」とコメントし、新たなクレジットカード事業、ポイント事業などを含めさらなる成長を目指す。

住信SBIネット銀行の今後の取り組み
会見では、北尾氏が「新たな私たちの事業分野として『ネオメディア生態系』の構築を考えている。NTTとNTTドコモはメディア、エンターテインメント関連で既に縦型のショート動画配信などを手掛け、多くのIP(知的財産)を持っている。そもそも通信と放送は融合していくべきもの。私たちもこの分野で提携関係ができるのではないかと考えている」とコメントし、新たなビジネス領域にも踏み出す姿勢を見せた。
NTTドコモでは、既にマネックスグループとの資本業務提携を結んでいるが、前田氏は「住信SBIネット銀行のお客さまでSBI証券をお使いになっている方もたくさんいる。その方々が今回の提携によって不便になってしまうことはありえない。マネックス証券も私たちにとって重要な機能を持った会社。サービスを提供する機会もしっかりと作っていきたい。まずはお客さま第一ということで、両者の機能を提供していきたいと考えている」とした。