専用ソフトを用いた端末データ消去は約1割にとどまる--GIGAスクール端末処分の実態調査

寺島菜央 (編集部)

2025-06-02 17:12

 児童生徒のデータプライバシー協会は6月2日、「GIGAスクール端末処分に関する実態調査」の結果を発表した。同調査は、1787自治体の教育委員会を対象に、郵送配布およびFAX回収によるアンケート調査を行った。実査時期は2025年4月末~5月上旬で、有効回答数は104だった。

 GIGAスクール端末の処分は、各自治体の教育委員会が主体となり判断・実施しており、具体的な対応方針や情報管理の在り方が全国で問われている。同調査では、端末のデータ消去方法および処理費用の実態を調査している。

 調査結果によると、適正といえないデータの消去方法である「初期化・リセット」「磁気消去」と回答した教育委員会は23%で、「物理破壊」を含めると43.2%に上ることが明らかになった。物理破壊は、通電不可端末などでやむを得ず破壊する場合、SSDを2mm以下に粉砕しなければならないと定義されている。また、初期化やリセットではデータが確実に消去されたことを1台ずつ証明する手段がなく、実際にはデータが端末内に残存し、復元ソフトなどで読み出される可能性があると同協会は指摘する。

 一方で、安全とされている「専用ソフトウェアを用いたデータ消去」と回答したのはわずか12.5%となり、回答を得た教育委員会の多くが、端末のデータ消去漏れリスクを抱えている現状が浮き彫りになった。

データ消去方法について(児童生徒のデータプライバシー協会調べ)
データ消去方法について(児童生徒のデータプライバシー協会調べ)

 また、データ消去履行確認の方法について、37.5%が「消去証明書を委託事業者から取得(資産管理番号が区別できない証明書)」と回答。他方、「消去証明書または消去ソフトのログを委託事業者から取得(資産管理番号が区別できる証明書)」は20.2%となった。同協会は、今後、多くの自治体で端末の処分事業者選定が本格化を迎える前に、1台ごとの消去ログが取れる適正なデータ消去作業を各自治体が実施すべきだとしている。

 文部科学省が2024年1月に改訂した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」は、端末の処分時には専用ソフトウェアを用いたデータ消去の実施を規定している。専用ソフトウェアによる消去では、1台ごとの消去ログやデータ消去証明書の発行ができ、より確実なデータ消去ができるという。

データ消去の履行確認方法について(児童生徒のデータプライバシー協会調べ)
データ消去の履行確認方法について(児童生徒のデータプライバシー協会調べ)

 データ消去の工数・費用確保については、「データ消去作業を外部委託する予算を確保している」が28.8%と最も多く、以下「GIGA2.0の調達価格に、仕様として含めている」(25.0%)、「その他」(24.0%)、「無償で委託する」(11.5%)、「データ消去作業を内部で行うために必要な自治体職員・設備・予算を確保している」(9.6%)と続いた。

 データ消去作業を外部委託する予算を確保できていない教育委員会からは、「必要な情報の不足」や「適正に対応できる事業者がわからない、見つからない」「予算が確保できない」といった声が寄せられるという。同協会は、特に予算の制約から、端末の調達と処分を一括で委託するケースが多いと考えられ、教育委員会が適正な判断や運用を行うための支援体制強化が求められるとした。

データ消去の工数・費用確保について(児童生徒のデータプライバシー協会調べ)
データ消去の工数・費用確保について(児童生徒のデータプライバシー協会調べ)

 全国ICT教育首長協議会 会長の横尾俊彦氏は、この調査結果を踏まえて以下のようにコメントしている。

 「調査結果により見えてきたのは『データ消去が不完全なまま処理が進む恐れ』『GIGAスクール端末のデータ消去履行確認等が不十分な恐れ』『予算確保が十分でない場合に、適切なデータ消去がなされない恐れ』などだ。デジタル社会において真に心豊かな人生実現のためにICT教育の充実やデジタルリテラシー向上が大切になっている。その実現のためにもより安心安全で利用・活用のできる環境づくりも不可欠だ。ぜひ、調査結果も参考に、あるべき姿をお考えいただき、子どもたちと全ての人々のデジタル活用向上に資するべく、力を合わせていきたいと思う」

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