Reutersが米国時間5月30日に報じたところによると、AIスタートアップのAnthropicは、年間売上高が30億ドルに達し、わずか5カ月で200%の増加となったという。これは、企業における生成AIツールの需要の高まりを示している。
Reutersは匿名筋からの情報で、Anthropicの年間売上高(現在の収益率が継続すると仮定した場合の年間総収入予測)が、12月には10億ドル近くに達し、3月下旬には20億ドルを超え、5月には30億ドルに達したと報じている。
2021年に元OpenAIの従業員であるDario Amodei氏とDaniela Amodei氏の兄妹によって設立されたAnthropicは、生成AIチャットボット「Claude」ファミリーを中心にビジネスモデルを構築してきた。同社はまた、強力なAIツールを責任ある形で導入するリーダーとしての地位を確立している。Amodei兄妹に続き、多くのOpenAI研究者がAnthropicに移籍しているが、その多くはスピードよりも安全性を優先する環境で働きたいという願望を理由に挙げている。
OpenAIが「ChatGPT」などの消費者向けAI製品市場を独占している一方で、Anthropicは企業顧客を中心に地位を確立している。同社は、まず第一にSaaSベンダーであり、Claudeの消費者向けサブスクリプションを通じても利益を得ている。
Anthropicの最新モデルの一つである「Claude Opus 4」は、3月にリリースされ、同社はブログ記事で「世界最高のコーディングモデル」とアピールしている。
Anthropicはまた、AIツールにおけるプライバシーとデータセキュリティを重視している。例えば、同社の企業顧客はプライベートクラウド展開やその他のサイバーセキュリティ機能を利用できる。ChatGPTの無料版や「ChatGPT Plus」では、ユーザーのやりとりがモデルのトレーニングに自動的に使用されることに同意する必要がある。しかし、Anthropicはユーザーの明示的な同意なしにデータを使用することはない。
これらの要因が相まって、Anthropicは特定の市場において急速かつ加速的に成長していると言える。Reutersが引用したあるベンチャーキャピタリストは、同社の12月以降の成長は、SaaS企業としてはこれまで見たことがないほど速いと述べている。
企業でのAI利用が拡大するにつれて、このテクノロジーがいずれ労働力の大部分を自動化するという考えが深まっている。これは、新たな社会的および経済的課題をもたらす可能性がある。
先ごろのAxiosとのインタビューで、Dario Amodei氏は、AIがヘルスケアのような重要な分野でイノベーションを推進する一方で、今後5年以内に全てのエントリーレベルのホワイトカラー職の半分を代替する可能性があると警告した。
新興技術が雇用市場に与える影響は予測が非常に難しいが、Amodei氏の憂慮すべき予測を裏付ける初期の証拠も幾つか存在する。例えば、ベンチャーキャピタル企業のSignalFireの最近のレポートによると、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、テクノロジー企業に採用される新卒の数が減少している。この現象は、それらの企業が日常業務を処理するためにAIを導入していることによって部分的に促進されている可能性がある。
Amodei氏はまた、早ければ2026年には、AIによって1人企業が10億ドルの企業価値に達することが可能になるかもしれないとも述べている。

提供:Sabrina Ortiz/ZDNET
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。