OpenAIが描くAIの未来像と市場競争の行方--「ChatGPT」は「スーパーアシスタント」に進化

Lance Whitney (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-06-03 08:59

 現在の生成AIブームをけん引している「ChatGPT」は、既に有能なAIとして質問への回答、コンテンツ生成、幅広いトピックに関する対話を可能にしている。しかし、OpenAIは現状にとどまらず、この人気AIを「スーパーアシスタント」へと進化させるという大きな計画を抱いている。

 OpenAIのChatGPTに関する目標は、司法省がGoogleに対して起こした独占禁止法訴訟の一環として提出された、機密性の高い内部文書によって明らかになった。「ChatGPT: H1 2025 Strategy(ChatGPT:2025年上半期戦略)」と題された文書には、OpenAIがChatGPTを、ユーザーの意図を理解し、インターネットのインターフェースとして機能する、直感的なスーパーアシスタントへと進化させるという近未来の展望が描写されている。

 OpenAIは、ChatGPTが単なるチャットボットの域を超えていると強調している。なぜなら、既に質問に答えたり、文章を作ったり、プログラムのコードを書いたりするのに使われているからだ。さらに一歩進んで、ChatGPTが将来的に、専門家、家庭教師、アドバイザー、ひらめきを与えてくれる存在、一緒に作業する仲間、翻訳家、エンターテイナー、話し相手、物事を分析する人、といったさまざまな役割を果たすことを目指している。

 OpenAIは文書中で、ChatGPTをスーパーアシスタントへと進化させ始めると述べている。スーパーアシスタントは、ユーザーを理解し、その価値観を把握した上で、コンピューターを扱う賢明で信頼でき、感情的に優れた人間が行えるあらゆるタスクを支援するものになるという。さらに、同社は「『o2』や『o3』のようなモデルは、ついにエージェント型タスクを確実に実行できるほど賢くなり、Computer UseのようなツールはChatGPTの行動能力を高める。また、マルチモーダルや生成的UIのようなインタラクションパラダイムは、ChatGPTとユーザーの双方がタスクに最適な方法で自己表現することを可能にするため、このタイミングは適切である」とも付け加えている。

 スーパーアシスタントが具体的にどのような能力を持つのかについては、OpenAIの文書が言及している。それによると、スーパーアシスタントは「T字型スキル」を持つインテリジェントな存在として表現されている。T字型スキルとは、ビジネス分野で熟練した従業員を表す際によく使われる表現であり、特定の分野で専門的な知識を持ちながら、同時に幅広い知識も兼ね備えていることを意味する。これをAIの文脈に当てはめると、ChatGPTはコーディングのような一つ以上の分野において深い専門知識を持つ一方で、特に退屈で骨の折れる可能性がある他のさまざまな分野についても広範な理解を持つことになる。

 OpenAIは、スーパーアシスタントの「広範な部分」について、ユーザーの生活をより楽にすることに関わるものだと補足している。具体的には、質問への回答、住居探し、弁護士への連絡、ジムへの入会、休暇の計画、贈答品の購入、カレンダーやToDoリストの管理、メール送信といったタスクを挙げている。なお、OpenAIにコメントを求めたがすぐには回答を得られていない。

 加えて、スーパーアシスタントという名称は、AIがユーザーに合わせてパーソナライズされるだけでなく、いつでもどこでも利用できることを示唆している。この点についてOpenAIは、ChatGPTがウェブサイト、「Windows」および「Mac」のネイティブアプリケーション、モバイルアプリケーション、メールサービスとして提供されるだけでなく、Appleの「Siri」のような他のリソースを介した拡張機能としても利用可能になることを強調している。

 OpenAIは、ChatGPTの成長と収益に関して、これらの新しいスキルが2026年上半期中に直接的な利益を生み出すことはないと見ている。しかし、同社はこの期間中にこれらの機能を構築することで、同年下半期には新しいモデルからの経済的利益を期待している。

 この文書からは、OpenAIが競合他社をどのように捉えているかも読み取れる。ChatGPTは生成AIブームをけん引する存在だが、「Claude AI」「Gemini」「Copilot」「Meta AI」といった競合がすぐ後ろに迫っていると、OpenAIは認識しているのだ。同社は自社がこの分野のリーダーであるとしながらも、それに安住せず、最高の無料モデル、最高のインターフェース、最強のブランドを提供し続ける必要があると述べている。

 2025年に関して、OpenAIが最も警戒していると思われる競合他社が1社存在する。その企業は、Googleのように自社製品を共食いさせることなく、同じ機能や性能を全ての製品に組み込む能力を持つため、最大の脅威となっている。企業名は伏せられているものの、伏せ字の長さから判断すると、最も可能性が高いのはMetaである。

 文書の残りの大部分も同様に編集されているため、そこからさらなる情報を得ることは困難である。しかし、OpenAIはAI市場における現在の優位性を維持するだけでなく、他の幾つかの分野においても競争上の優位性を確立しようとしていることが読み取れる。そして、このことは、Microsoft、Apple、Googleといった企業を長年悩ませてきた独占禁止法関連の問題に直接的に結びついている。

 OpenAIは、「真の選択肢が競争を促進し、全ての人に利益をもたらす」と述べている。さらに、ユーザーは自身のAIアシスタントを選択できるべきであり、iOS、Android、Windowsを利用している場合、ChatGPTをデフォルトに設定できるようにすべきだと主張している。Apple、Google、Microsoft、Metaといった企業は、公正な代替手段をユーザーに提供することなく、自社のAIを押し付けるべきではないという考えを示す。これは検索エンジンにも当てはまるとし、「Google、Apple、Microsoftはユーザーに既定の検索エンジンの選択肢を提供し、ChatGPTを含むAIアシスタントがその基礎となるインデックスデータにアクセスできるようにすべきだ」と訴えている。

提供:koiguo/Getty
提供:koiguo/Getty

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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