日立製作所は、同社グループ全体の環境に対するビジョン・長期目標となる「日立環境イノベーション2050」を改定した。2050年までにバリューチェーン全体でのネットゼロを目指す。
同社は、2016年に日立環境イノベーション2050を策定し、3年ごとのアクションプランにより、事業所やバリューチェーン全体のカーボンニュートラル達成に向けた活動、資源の利用効率の改善、生態系保全活動などに取り組む。近年の生成AI拡大に伴う電力需要の急増、地政学リスクに起因するバッテリーなどの製造に必要な鉱物資源の囲い込み、自然災害の激甚化などを背景に、非化石エネルギーの利用拡大、循環型ビジネスへの転換、自然資本の保全や回復に向けた取り組みなどが模索されているとし、今回の改定では、「脱炭素」「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」「ネイチャーポジティブ」の3つを柱に設定。グリーントランスフォーメーション(GX)のグローバルリーダーを目指すとしている。
脱炭素では、これまで2050年度までにバリューチェーン全体のカーボンニュートラル実現を目標としたが、今回の改定で二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガス(GHG)全体の削減を目標とし、2050年度までにバリューチェーン全体のネットゼロ実現を目指す。高効率な製品や革新的なサービス、将来技術で、GHG排出量削減やバリューチェーンの脱炭素化を図っていく。
サーキュラーエコノミーでは、これまで2050年度までに水・資源利用効率を2010年度比で50%改善する目標としたが、今回の改定で2050年度までの「サーキュラートランスフォーメーション」(資源とビジネスを循環型へ移行)を新たな目標に設定。循環型ビジネスへの転換により、り、エネルギーや資源の使用量最小化、シェアリングやリカーリングによる製品使用時の価値向上と製品寿命の延長、リマニュファクチャリングやリサイクルによる寿命を迎えた製品の再資源化などに取り組む。また、水の利用効率改善で水を自然資本の一部と捉え直し、引き続き推進する。
ネイチャーポジティブでは、これまで自らの事業活動による「自然への影響の最小化」を目標とし、新たに自然災害起因の被害軽減、より迅速な回復への貢献も含めた「ネイチャーレジリエンス」を2050年度の目標に加えた。
また、Science Based Targets initiative(SBTi)から「ネットゼロ目標」の認定を取得。2015年の「パリ協定」における「1.5度目標」達成に向け、日立環境イノベーション2050の改定で設定した2050年度までのネットゼロ実現に取り組む。
短期目標では、2030年度までにスコープ1(自社)とスコープ2(自社+調達エネルギー)のGHG排出量を2019年度比で83%削減し、スコープ3(サプライチェーン全体)でも購入製品・サービスからの排出量および販売製品の使用によるGHG排出量を2030年度までに2022 年度比で売上総利益当たり52%削減する。
さらに長期目標では、2050年度までにスコープ1/2のGHG排出量を2019年度比で90%削減し、スコープ3では2050年度までに2022年度比で売上総利益当たり97%削減する。