富士通は6月3日、金融サービス事業に関する説明会を開催し、同社製造によるATMおよび金融の営業店専用ハードウェアを終了すると発表した。今後のハードウェアは沖電気工業(OKI)から調達し、同社はソフトウェアおよびクラウドに集中する。

今後のハードウェア提供は富士通製からOKI製に変更となる(富士通資料より)
ATMと営業店専用ハードウェアの提供は2028年3月末で終了する。また、既存顧客への保守サポートの提供は、契約状況により2036年3月末までに順次終了する。ハードウェアの提供継続に向けてOKIと基本合意を締結しており、コンビニエンスストア向けATMについてもソリューションに最適なハードウェアを選定して提供していくという。

富士通 執行役員常務の八木勝氏
説明会に登壇した執行役員常務の八木勝氏は、同社が1970年代から約50年にわたりATMや営業店システム、勘定系システムを金融業界に提供し続けてきたと強調。他方で、金融サービスのデジタル化やオムニチャネル化、異業種の金融参入などの市場変化があり、同社は今後も勘定系システムなど金融の基幹領域を継続しつつ、市場変化に対応した多様なデータの活用、パーソナライズサービスの展開といった新たな価値を提供していくとした。
今後は、勘定系領域でソリューションの「Fujitsu Core Banking xBank」、営業店領域でソリューションの「Digital Branch」を推進。Fujitsu Core Banking xBankは、マイクロサービスアーキテクチャーを採用し、全機能あるいは金融機関が必要とする機能のみでも導入でき、利用形態に応じた価格を設定するという。
直近では、ソニー銀行がAmazon Web Services(AWS)に構築して5月に本番稼働させた新勘定系システムに採用されており、八木氏は、APIで機能間の整合性を担保しつつ、従来システムに比べ資産を約6割削減したと説明。この領域では、プログラム資産や設計書といった成果をAIに取り込み、AIドリブンによる開発・運用プロセスを実現して、顧客に価値を提供していくとした。

「Fujitsu Core Banking xBank」(富士通資料より)
営業店領域では、勘定系業務基盤「Financial Business Components」(FBI)のクラウド版を中核とし、スマートフォンやタブレット端末を利用した金融機関のオムニチャネル化を支援。八木氏は、「クラウドにより対面・非対面をつなぎ、多様な金融取引などのデータを集約、AIにより活用し、データドリブンな金融ビジネスを実現する」と述べた。FBCは3月時点で全国33行が導入しており、広島銀行と東和銀行でクラウド版が稼働中。他行もクラウドに移行中だという。
八木氏は、こうした金融ビジネスの取り組みを通じてスマート社会の実現を目指しているとも説明。例えば、IHIおよびみずほ銀行と進める脱炭素化での「J-クレジット」創出支援サービスや、三井住友銀行とのAI需要予測サービスがあるとしている。

「Digital Branch」(富士通資料より)
今後の金融サービスでは、同社が推進する「Uvance」において金融向けメニューを体系化した「Uvance for Finance」を展開する。金融サービス売上収益は、2020年度が3607億円、2024年度が4690億円と成長し、2025年度は5200億円以上を目指す。このうちUvanceは、
2024年度の325億円を2025年度は700億円以上に引き上げる。

「Uvance for Finance」のコンセプト(富士通資料より)
また、高い市場占有率(シェア)の維持拡大も狙い、ネットバンク勘定系システムのシェアを2025年の31%から2035年には50%以上、営業店システムでは34%から50%以上をそれぞれ伸ばす目標を掲げている。