内田洋行は、8月に開校予定の北海道中富良野町の義務教育学校「ラベンダーの杜中富良野町立 なかふらの学園」に、省エネルギー環境制御に対応した中央監視システムを構築した。6月3日、内田洋行が発表した。
同校は、北海道の義務教育段階の学校として初めて、優れた環境性能を示す「ZEB Ready」認証を取得した。ZEB Readyとは、年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロまたはマイナスの建築物(ZEB:Net Zero Energy Building)の実現を目指す先進建築物のこと。外皮の高断熱化および高効率な省エネルギー設備を備えている。
内田洋行が構築した中央監視システムはクラウド上で稼働し、空調や照明、太陽光発電などのエネルギー設備を効率的に管理する。教職員はスマートフォンなどから空調や照明を一元的に操作でき、業務負担の軽減と学習環境の快適性向上に貢献する。

なかふらの学園の概要
中富良野町教育委員会は、9年制の義務教育学校の構想を進めてきた。新校舎では、異年齢での学び合いや教科横断型の探究活動など、多様な学びが展開される。校舎は高い可変性と拡張性を持ち、将来の人口変動や学びの多様化に対応できる設計となっている。中富良野町は「ゼロカーボンシティーなかふらの」を宣言しており、新校舎は「学びと環境との共生」を重要なテーマとしている。
内田洋行の「Smart Building Integration」を活用した中央監視システムは、空調・照明・太陽光発電などの設備を一元管理し、建物全体のエネルギーを最適に制御する。収集されたデータは環境教育にも活用され、校舎そのものが学びの教材となる。新校舎は、断熱強化、自然エネルギーの活用、高効率照明、BEMSなどを導入し、基準一次エネルギー消費量から60%以上の削減を目指す。BEMSとは、Building Energy Management Systemの略で、建物内で使用する電力の使用量などを計測して可視化を行う。
オープンテクノロジーを用いた中央監視システムは、エネルギー計測や規定データの自動作成機能により、補助金申請の報告業務も支援する。クラウド環境での構築により、遠隔からの保守が可能となり、IT系のAPIやモジュール連携による段階的な機能拡張も予定されている。

中央監視システム画面
教職員はスマートフォンから教室設備や体育館の遠隔操作が可能となり、授業準備の負担を軽減できる。エネルギー消費状況をリアルタイム表示するエネルギーサイネージは、子どもたちの環境学習に活用されるという。また、エネルギー使用量や操作履歴のデータ分析を通じて、校舎の運用改善も図る。

新校舎に設置された太陽光発電や消費電力を子どもたちが学べるエネルギーサイネージ
新校舎には、可動式の間仕切りや家具が採用され、教室空間を柔軟に変更できる。理科室には最新の実験機器が導入され、デジタル顕微鏡や「サイエンスwebセンサー」などを活用した実践的な学習が可能となる。
また校舎には北海道産の木材が積極的に使用され、温かみのある学習空間を創出する。学校図書館と公共図書館との連携も強化され、蔵書の一元管理や横断検索が可能となる。ICタグを活用したセルフ貸出システムも導入され、読書活動の促進と図書館運営の効率化を図るとしている。