データウェアハウス大手のSnowflakeは米国時間6月2~5日、年次ユーザーカンファレンス「Snowflake Summit 2025」を開催している。同社は、インフラ関連のソフトウェアベンダーと同様に、自社プラットフォーム全体へのAIの統合を強く打ち出している。
同社は約1万2000社の顧客を擁し、企業向けに特化したサービスを展開している。そのため、今回の発表全体を通じて一貫して伝えられたメッセージは明確だった。それは、同社のデータベースを活用して日々の業務を行うビジネスアナリストが、AIモデルの構築と、それを用いた予測分析の両面で中心的な役割を果たせるという点である。
米ZDNETの編集者であるSabrina Ortiz氏の記事によると、今回発表された新機能の1つに、自然言語によるプロンプトでデータと対話できるチャットモードがある。同機能は、OpenAIやAnthropicの大規模言語モデル(LLM)、さらにSnowflake独自の「Cortex」モデルによって支えられている。また、「Data Science Agent」と呼ばれる新機能により、データの準備や分析にかかる作業の一部が自動化され、ユーザーの負担が軽減されている。
また、ZDNETに寄稿するWebb Wright氏にの記事によれば、「Openflow」と名付けられた新サービスは、従来の「抽出・変換・ロード(ETL)」と呼ばれるデータ統合プロセスに対するSnowflakeの新たなアプローチを示している。同社は、Openflowの機能によって、AIエージェントが利用するデータの整備という複雑な作業が効率化され、AIエージェントの開発や運用がよりスムーズになると述べている。
これら2つの発表に加え、同社は生成AI開発が行われるプログラムへの取り組みを強化している。
「Cortex AISQL」と呼ばれる機能は、ビジネスアナリストがAIモデルの出力を標準的なSQLクエリー言語のコマンド内に組み込むことを可能にする。例えば、リレーショナルデータベースを操作する基本的な手法の1つである「JOIN」コマンドは、特定のテーブルに固定されるのではなく、AIモデルが示す、個人の履歴書と企業の公開求人との関連性に基づいて、動的に値を変えることができるようになる。
同機能により、複雑で段階的なデータクエリを、従来よりも少ないコーディングで簡単に構築できるようになると述べている。
Snowflakeは、この仕組みによってビジネスアナリストの役割がより重要になると述べている。「この統合的なアプローチにより、従来はデータサイエンスの専門知識と数週間の開発期間を要していた作業が、ビジネスアナリストによって数分で構築・修正可能なシンプルなSQLクエリーへと変わる」とし、さらに「これにより、アナリストがAI開発者としての役割も担えるようになる」と同社は強調している。

提供:Snowflake

提供:Snowflake
従来はDevOpsやDevSecOpsの分野に属していた「オブザーバビリティ(可観測性)」の概念が、大規模言語モデル(LLM)にも適用される。これにより、Snowflakeの顧客はAIモデルの信頼性などの指標に対するパフォーマンスを継続的に監視・評価できるようになる。
同社によれば、このツールには、AIモデルの出力を評価するための「評価用データセット」が用意されており、さらにデバッグやプロンプトの最適化、ガバナンスを支援するロギング機能も備えている。
AIモデルのエンジニアリングにおいても新たな進展があり、Snowflakeは、これによりモデルの構築プロセスが自社のツール群とより緊密に連携し、本番環境での展開可能な範囲も拡大すると主張している。
その1つが、Snowflakeコンテナーサービス内で「MLジョブ」と呼ばれる仕組みを用い、開発環境やノートブックの文脈から機械学習(ML)コードを実行できる機能である。これにより、AIモデルのトレーニングやその他の処理を、Snowflake上の他の開発作業と統合して実行できるようになる。MLジョブは、「Amazon Web Services(AWS)」と「Microsoft Azure」で、まもなく一般提供が開始される予定である。
トレーニング中に最も優れた性能を示すAIモデルを特定する新たな手法として、「エクスペリメントトラッキング」と呼ばれる機能が導入される。同機能により、開発者は個々のモデルを共有し、再現可能な形で管理できる。現在、プライベートプレビュー段階にある。
トレーニング済みモデルの提供手段として、Snowflakeは「Model Registry」に、Hugging Faceで開発・ステージングされたモデルを取り込める機能を追加した。Snowflakeによれば、Hugging Face上の任意のモデルを、クライアント側でモデルをダウンロードすることなく、ワンクリックでSnowflakeコンテナサービスに取り込むことが可能であり、その際にはモデルハンドルと、Snowflake上でのロギングおよび提供に必要なタスクを指定するだけだとしている。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。