AIはこれから私たちの働き方を大きく変えていくだろう。どう向き合えばよいのか。うまく活用するにはどうすればよいか。こうした疑問について、米スタンフォード大学教授でAIスペシャリストのJeremy Utley(ジェレミー・アトリー)氏の見解を聞く機会があったので、今回はその内容を紹介したい。
「AIはチームメイト」「AIを『使う』とは言わない」

スタンフォード大学教授のJeremy Utley氏
Utley氏は、スタンフォード大学で「最も人気のある教授」にも選ばれ、「AIとクリエイティビティーの融合によって組織変革を導くエキスパート」として注目されている。
そんな同氏の話を聞く機会があったのは、米Zoom Communications(以下、Zoom)の日本法人ZVC JAPANが先頃開催したオンラインイベント「働き方改革サミット」の講演だ。Zoomの最高人事責任者(Chief People Officer:CPO)であるMatthew Saxon(マシュー・サクソン)氏の質問を受ける形でスピーチを行った。以下、筆者が印象深く感じた内容を紹介しよう。
まず、企業において業務を進める際に、生成AIやAIエージェントがどんどん採用されていく中で、私たちはAIにどう向き合えばよいのか。この質問に対し、Utley氏は次のように答えた。
「企業においてはチームとして業務を進めることが多い中で、チームの一員として活躍してもらいたいAIをテクノロジーとして見るのではなく、仕事を共にする『チームメイト』として迎え入れる。従って、AIを『使う』とは言わない。まずはそうしたマインドセットの転換が必要だ」
「AIはチームメイト」「AIを『使う』とは言わない」と捉えるためには、たしかに意識の転換が必要だろう。特にAIエージェントに対しては、そうした向き合い方が求められるようになるのではないか。
次に、AIと向き合ってうまく付き合っていくためにはどうすればよいか。この質問に対し、Utley氏は次のように答えた。
「AIとうまく付き合っていきたいのならば、日頃からAIと積極的にやりとりすることだ。ちょっと何か聞きたいとか、アイデアがほしいと思った時に気軽に話しかける。いろいろやりとりする中で、逆にAIから自分に聞きたいことがあったら質問してほしいと投げれば、AIは自分の考えていることを知るために懸命に聞いてくる。AIと向き合ってうまく付き合っていくためにはどうすればよいかという質問だが、逆にAIは自分とどう向き合っているのかというと、『懸命に役に立とうとしている』というのが、私の見解だ。そのためにAIは聞かれたことに懸命に答えるし、こちら(自分)のことを知ろうとする。もっと言えば、AIは、人間がAI自身をもっと学びたいと言えば、惜しげもなく教えてくれる。こうしたやりとりを積み重ねていくことで、うまく付き合っていけるようになるのではないか」
「AIは懸命に役に立とうとしている」とは、これまで考えてもみなかった見方だが、たしかにそう捉えることもできる。AI自体には感情はないので親近感や信頼感といったものではないだろうが、人間側がそういう感情を持つのは、AIとうまく付き合っていくコツかもしれない。
ちなみに筆者がCopilotに「あなたとどうすれば、うまく付き合えますか?」と聞いたところ、表1のような答えが返ってきた。Utley氏の見方を少し感じることができた。

(表1)筆者がCopilotに「あなたとどうすれば、うまく付き合えますか?」と聞いてみた結果