マイクロソフト、新版「Outlook」を機能強化--「Copilot」やオフライン対応など拡充

Lance Whitney

2025-06-05 07:56

 Microsoftは、「Windows」版の新しい「Outlook」アプリを人々に使ってもらうため、懸命な努力を続けている。その一環として、同アプリに最新のアップデートが提供された。Windows Centralが引用した同社のサポートページによると、これらのアップデートには、Copilot、オフラインアクセス、その他幾つかの特典が含まれている。

 中でも特に注目すべきなのはCopilotの機能である。同機能は、全ての接続済みメールアカウントで利用可能となった。これには、「Outlook.com」「Hotmail.com」「Live.com」「MSN.com」のほか、「Gmail」「Yahoo」「iCloud」などのサードパーティーのメールサービスも含まれる。ただし、この機能は無料では利用できない。Copilotを使うには、「Copilot Pro」または「Microsoft 365 Personal/Family」プランに含まれるAIクレジットが必要となる。

 Copilotを利用できる場合は、画面上部のツールバーにアイコンが表示される。そのアイコンをクリックすると、プロンプト)に基づいて、新しいメールの下書きをCopilotに依頼できる。例えば、「期日よりも早く完了した全てのプロジェクトをもとに、上司に15%の昇給をお願いするメールを作成して」と指示すれば、Copilotがその内容に沿った下書きを自動で作成する。

 また、メール内の既存のテキストを選択して、Copilotに対してさまざまな編集を依頼可能だ。文章の書き換え、文法やスペルの修正、トーンの調整、文章の短縮や拡張などに対応する。さらに、Copilotがメッセージの質を高めるための改善案を提案してくれるコーチング機能も利用できる。

 Copilotを使いたくない場合は、簡単に無効化できる。Copilotのボタンをクリックし、「Settings(設定)」を選択する。そこにある「Turn on Copilot(Copilotを有効にする)」というスイッチをオフにするだけで、機能を無効化できる。

 オフライン環境でもより多くの機能が使えるようになった。これまで最大7日分だったメールの保存期間が、最大30日分まで拡張され、オフラインでもより多くのメールにアクセスできるようになった。また、特定の条件に基づいてメールを自動で整理する「検索」フォルダーも、オフラインで利用可能になった。さらに、オフライン中でも送信済みメールを取り消せるようになった。

 クラシック版のOutlookでは、メールの保存に使われるPSTファイルとの連携がスムーズに行われていた。新しいOutlookでも、PSTファイル内のメールに対して返信や転送ができるようになった。Microsoftは、今後のアップデートでPSTファイルの対応を強化すると明らかにしている。また、異なる個人アカウント間でメールを簡単に移動できるようになったほか、共有フォルダーを「お気に入り」として登録可能になった。

 これらの変更点の多くは、Outlookにとって有益な機能追加といえるだろう。特にCopilotへのアクセスは、その代表例だ。ただし筆者としては、Microsoftが当初からやや混乱を招く名称で展開しているこの新しいOutlookには、依然としてあまり好感を持てていない。

 確かに、新しいOutlookにはクラシック版と比べて幾つかの利点がある。Windowsアプリとして設計されているため、動作が軽快で高速、さらにデザイン面でも洗練されている。とはいえ、まだ多くの面で物足りなさが残るのも事実だ。特に、ヘビーユーザーやビジネスユーザーよりも、一般的な消費者向けに重点を置いて設計されているように感じられる点が、その一因といえる。

 新しいOutlookでは、VBAマクロのサポートがなく、一部のエンタープライズアカウントにも対応していない。また、PSTファイルやオフラインアクセスに関しても、依然としてサポートが限定的だ。筆者は長年、「Office」(現在の「Microsoft 365」)に含まれる従来のOutlookを使ってきた。このアプリは確かに動作が重く感じられることもあり、機能が多すぎて煩雑に思える場面もある。実際、ほとんどのユーザーが使わないような機能も含まれている。それでも筆者は、機能が足りないアプリよりも、多少過剰でも多機能なアプリの方を好む。

 また、Microsoftが新しいOutlookを普及させるために用いている、やや強引とも取れる手法にも懸念を感じる。これまでのところ、新しいOutlookは、筆者が好んで使っていた「Windows Mail&Calendar」の後継として導入されてきた。同時に、同社は従来のOutlookをこの新しいアプリに置き換える方針を示しており、これは個人ユーザーだけでなく、企業ユーザーにとっても不安を招く動きとなりかねない。

 理想を言えば、Microsoftには従来のOutlookと新しいOutlookを、それぞれ異なるユーザー層に向けた別個のアプリとして今後も併存させてほしい。両方のアプリを継続的に改善・強化していくことが望まれる、従来のOutlookユーザーが必要とする多くの基本機能がまだ備わっていない新バージョンへの移行を、ユーザーに強制すべきではない。

提供:Screenshot by Lance Whitney/ZDNET
提供:Screenshot by Lance Whitney/ZDNET

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]