IFSジャパン、日本市場のビジネス戦略を発表--産業用AIやパートナーシップを強調

藤本和彦 (編集部)

2025-06-05 11:30

 IFSジャパンは6月4日、日本市場でのビジネス拡大に向けた事業戦略説明会を開催した。同日開催の「IFS Connect Japan 2025」に合わせて来日したIFS幹部らが日本への投資計画などを明らかにした。

 スウェーデンで1983年に設立された同社は、エンタープライズソフトウェアの大手ベンダーとして知られる。1997年に日本法人を立ち上げた。現在、グローバルに8000人近くの従業員を抱え、90カ国以上で事業を展開する。2024年度の収益は12億2800万ユーロで、クラウド収益は前年比38%増、年間定期収益(ARR)は前年比32%増と好調を維持している。

 同社は、航空宇宙、サービス、通信、建設、エネルギー、製造の6分野に注力している。IFSのグループ最高執行責任者(COO)であるMichael Ouissi氏は、顧客数が堅調に伸びており、特に新規顧客の獲得が好調であると強調。直近でも、日本航空(JAL)やギガフォトンの導入が発表されている。

 また、産業用AIを同社のコア領域と位置付け、顧客獲得の重要な要因となっているとの見解を示した。生成AIがビジネスプロセスなどに深く組み込まれるにつれて、今後もソフトウェアへの組み込みをさらに強化していく方針とした。

 その上で、Ouissi氏は産業用AIの導入を加速するための戦略的イノベーションプログラム「IFS Nexus Black」も紹介された。

 日本への投資計画については、IFSでアジア中東地域担当プレジデントを務めるHannes Liebe氏が明らかにした。

 日本法人のIFSジャパンは、2022年から2024年にかけて従業員数が85%増加し、2025年にはさらに27%増加する見込みだ。また、売上高は同時期に30%増加し、2025年にはさらに60%の増加を計画している。受注額も同時期に50%増加し、2025年には83%の増加を見込んでいる。

 今後の投資分野としては、主に次の3点を挙げた。まず、製品開発をさらに強化し、特に日本市場に合わせてカスタマイズを進めていく。次に、エコシステムの拡大に注力し、国内パートナーとの協業を深める方針だ。また、国内チームの拡充と、顧客を支えるための人材強化にも積極的に投資していく。

 次に、IFS テクノロジー部門 シニアバイスプレジデント(SVP)のVaibs Kumar氏が製品アップデートについて語った。

 同氏はまず、「AIのイノベーションは、差別化の中核をなす要素である」といい、現在は同社が注力する6つの産業向けにAI機能を提供していると述べた。特に、各領域においてビジネスロジックの要件を適切な文脈で提供することが重要であり、そのためには汎用型の大規模言語モデル(LLM)よりも、特定の分野に特化したより精度の高いAIが求められるとした。

IFSが提供するAI機能の構成イメージ
IFSが提供するAI機能の構成イメージ

 同社のAI機能は予測型AI、生成AI、エージェント型AIの3つの要素で構成される。その特徴として、Kumar氏は「常に状況に応じて対応」「安全かつプライバシーを保護」「組み込み型、すぐに利用可能」「信頼性、透明性、倫理性を備えたAI」「組み込み機能、オープンかつ拡張可能」の5つを挙げた。

 Kumar氏によると、同社の予測型AIは「IFS Cloud」で以前から提供されており、主にスケジュール調整や異常値の調整などに活用されているという。生成AIは自然言語のインターフェースとして、ユーザーに洞察を提供したり、質問に応答したりする。エージェント型AIについては、「今後台頭してくるであろう領域」といい、ビジネスプロセスに変革をもたらし、複数のエージェント間でのやりとりや、人間が介在する形での協調を可能にすると説明した。

 最後に、IFSジャパン 代表取締役社長の大熊裕幸氏が、パートナー関連の発表を行った。1社は、5月に社名変更したアルファスト(旧チェンシージャパン)で、同社は日本・米国・タイ・中国でIFSとの戦略的ビジネスパートナーとなっている。

 もう1社は、日本法人の設立以来のパートナーであるNECで、こちらは先ごろ戦略的パートナーシップの強化が発表されている。具体的には、両社が国内データセンターでIFS Cloudのクラウドソリューションを共同開発する。さらにNECのAIをIFS Cloudに組み込むことで、顧客の新たな体験や価値創造を目指す。

IFSのMichael Ouissi氏(右から2番目)、Hannes Liebe氏(1番右)、Vaibs Kumar氏(1番左)、IFSジャパンの大熊裕幸氏(左から2番目)。NEC 副社長 兼 CDOの吉崎敏文氏(中央)も会見に登壇した
IFSのMichael Ouissi氏(右から2番目)、Hannes Liebe氏(1番右)、Vaibs Kumar氏(1番左)、IFSジャパンの大熊裕幸氏(左から2番目)。NEC 副社長 兼 CDOの吉崎敏文氏(中央)も会見に登壇した

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