セールスフォース、「Agentforce for Sales」の利用効果などを説明

國谷武史 (編集部)

2025-06-05 14:55

 セールスフォース・ジャパンは6月5日、4月に国内提供を開始した営業部門向けAIエージェントサービス「Agentforce for Sales」の説明会を開き、商談機会の獲得や営業担当者のスキル強化といった同サービスで期待される利用効果などを紹介した。

セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部長の三戸篤氏
セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部長の三戸篤氏

 説明会の冒頭であいさつした専務執行役員 製品統括本部長の三戸篤氏は、2024年秋に同社のAIエージェントサービス「Agentforce」を発表して以降、さまざまな用途での活用が広がっていると報告。労働力減少が急速に進む日本では、多様化する顧客ニーズへ限られた人員でいかに迅速、最適な形で対応するかが課題であり、その解決にAIエージェントが期待されていると述べた。

 営業や顧客関係管理(CRM)などに関するデータを蓄積するセールスフォースのプラットフォーム上で稼働するAIエージェントは、さまざまな顧客接点を通じた顧客対応を実現するとし、特にAgentforce for Salesは、営業支援サービスを祖業とする同社にとって「一丁目一番地のものになる」(三戸氏)と紹介した。

 Agentforce for Salesでは、まずAIエージェントが顧客とやりとりする「Agentforce セールスディベロップメント」機能から提供。また、4月時点で営業担当者の育成を支援する「Agentforce セールスコーチング」も発表しており、今回はAgentforce セールスコーチングの国内提供の開始時期が2025年内になると明らかにした。また、Agentforceのライセンス体系も変更され、基本的にはAIエージェントが行う1件のアクション当たり日本円で約12円の従量課金になるという。なお、このアクションをユーザーがどう設計するかによって実際の費用は変わってくるようだ。

 説明会では、プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの伊藤深雪氏が、Agentforce セールスディベロップメントとAgentforce セールスコーチングの使い方を解説した。

 まずAgentforce セールスディベロップメントは、その主たる利用目的が商談件数の増加になるという。見込み客を大量に抱えていても営業担当者の人数不足でアプローチできていない、既存の商談対応に追われて新規顧客の開拓に手が回らない、営業スキルが属人化している――こうした状況の改善に役立つとする。

 具体的には、インサイドセールスにおいてAIエージェントがメールやチャット、ショートメッセージ(SMS)などを使い、見込み客に対して営業提案から質疑応答などのやりとり、商談のアポイント設定までを行う。これにより多様な顧客接点を通じて見込み客にアプローチでき、人が担当するよりも多くの見込み客へ同時に接触できる。24時間稼働し、多言語対応で日本語話者以外の見込み客ともやりとりできるという。

「Agentforce for Sales」のAgentforce セールスディベロップメント機能のデモ。AIエージェントが見込み客へ提案メールを送信し、面談設定までを行う
「Agentforce for Sales」のAgentforce セールスディベロップメント機能のデモ。AIエージェントが見込み客へ提案メールを送信し、面談設定までを行う

 現在はインサイドセールスの代行サービスが多数存在し、今後AIエージェントへの切り替えも想定される。サービス内容やコストなどが検討事項になるが、ユーザー側では、商談件数を増やすのか、そもそも未アプローチの大量の顧客にアプローチできるようにするのかといった、AIエージェントの使用目的や導入での評価基準などを明確にすることが重要になるとのことだ。

 一方のAgentforce セールスコーチングは、トップセールスの担当者のスキルをほかの担当者が獲得できるよう支援する育成機能になる。商談プロセスの前半と後半に分け、初期提案や顧客課題の把握など前半向けには、ユーザーがAIエージェントに対して5分程度の提案を行い、その内容をAIエージェントが評価、フィードバックする。本格的な提案や交渉といった後半向けには、顧客像を設定したAIエージェントとユーザーとの間でロールプレイング形式によりリアルタイムなやりとりを実施。終了後にAIエージェントがユーザーの評価、課題、改善方法を具体的に提示する。

Agentforce セールスコーチング機能のデモ。営業プロセスの前半に当たるスキル向上へ短時間のセールストークを行い、AIエージェントが内容を評価する
Agentforce セールスコーチング機能のデモ。営業プロセスの前半に当たるスキル向上へ短時間のセールストークを行い、AIエージェントが内容を評価する
Agentforce セールスコーチング機能のデモ。営業プロセスの後半に当たるスキル向上では、ロールプレイング形式でAIエージェントと交渉し、詳細な評価、改善アドバイスなどを提示する
Agentforce セールスコーチング機能のデモ。営業プロセスの後半に当たるスキル向上では、ロールプレイング形式でAIエージェントと交渉し、詳細な評価、改善アドバイスなどを提示する

 伊藤氏によれば、セールスフォース自身がAgentforce for Salesを駆使し、80万件以上の見込み客とのやりとりなどを実行しているとのこと。AIエージェントを使えば、見込み客とやりとりしたデータがセールスフォースに蓄積されるため、データを営業案件の成約率アップに役立てられるなどの活用効果もアピールした。

日本M&Aセンター 代表取締役社長の竹内直樹氏
日本M&Aセンター 代表取締役社長の竹内直樹氏

 説明会には、2014年からセールスフォースのサービスを活用しているという合併・買収(M&A)仲介事業大手の日本M&Aセンター 代表取締役社長の竹内直樹氏も登壇。近年の企業後継者不足を背景にM&Aの仲介ビジネスが活況を呈しているものの、かつて数十社ほどだった仲介事業者が現在では3000社近くに増え、事業者間の競争が激化しているという。

 こうした中、同社では、企業経営者にM&Aを提案し面会に至るまでの確率(アポ取得率)が2023年度の3.4%から2024年度は1.5%に、ダイレクトメールが開封されるなどの反響率も0.1%から0.01%に減少。しかし、「3つ以上の顧客接点を持つことで受託率がアップする勝ち筋が見えた」(竹内氏)とのことで、長年セールスフォースに蓄積しているデータをAIエージェントで活用したいという。

 既に5月からAgentforce for Salesを顧客との最初の接触に適用する概念実証(PoC)を進めているとし、6月末時点の結果を踏まえて今後を検討していくと説明した。

日本M&Aセンターで行っているAgentforce for Salesの概念実証のイメージ
日本M&Aセンターで行っているAgentforce for Salesの概念実証のイメージ

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