エンターテインメントから建築、製造、エンジニアリングなど、幅広い業界に向け、ソフトウェアを提供しているオートデスクが、水インフラのデジタルトランスフォーメーション(DX)に本格的に乗り出した。
既に、排水・上水道ネットワーク解析ソリューションや水処理に特化したSaaS製品などを展開。設備の老朽化と労働力不足の両面から課題感の高まる水インフラをソフトウェア面から支援する。
オートデスクでは、2021年に水道インフラストラクチャーソフトウェア開発を担う米Innovyzeを買収し、本格的に水インフラ分野に参入。オートデスク Autodesk Water Infrastructure シニアアカウントエグゼクティブの河村正士氏は「オートデスクが持つ設計ソフトウェアは、共通データ環境(CDE)を提供している。これは水関連製品との親和性が高い。水インフラは老朽化や人材不足、世界的に見た需要増などの課題を抱えている。加えて気候変動による洪水やゲリラ豪雨、高潮などの影響も受けている」と水関連分野における課題を挙げる。

オートデスク Autodesk Water Infrastructure シニアアカウントエグゼクティブの河村正士氏
多くの課題を抱える水インフラのDXには、AIの活用が効果的とのこと。河村氏は「水処理の効率化を上げるのにAIは大きく寄与する。しかし導入の障壁になっているのはコスト」と指摘する。
これらの課題解決に向け、オートデスクでは水インフラにおけるアセット管理を計画、設計、建設、運用・維持管理の4段階でサポート。さらに、降雨から上下水処理、雨水、配水まで、水循環全体を考慮したアプローチを進める。
提供しているのは、上水道の包括的なモデリングと解析、需要を予測するソフトウェア「InfoWorks WS Pro」や、下水・雨水排水を流域単位でモデリング解析する「InfoWorks ICM」。降雨情報や気象予測データを取り込み、浸水を予測するモジュールである「ICM Live」など。水処理に特化したSaaSとしてプラントや処理場における水質情報や流量などのプロセスデータを集約・分析し、中央監視を強化する「Info360 Plant」と、AIを活用し状態を評価するアセット管理ソリューション「Info360 Asset」などもそろえる。
これらの製品は、既に国内でも活用され始めている。InfoWorks ICMが、内水氾濫(はんらん)のハザードマップの見直し業務に採用されているほか、 InfoWorks WS ProやICM Liveのリアルタイムデータ解析機能が、一部の事業体で利用実績があるとのこと。福岡県久留米市では、Info360 Assetを水道管の管理、更新計画支援の実証に活用したという。

配水関連の製品群

下排水、雨水、洪水関連の製品群

浄水場・処理場関連の製品群
海外では、InfoWorks WS Proが水質問題を解決し、苦情件数を10%改善したり、欧州初となる「スマート運河」のエンジニアリングを開発したりといった成功事例もあるとのこと。日本国内でもこうした事例を参考に水インフラが抱える課題解決に向けたソリューションを提供していくという。