人工知能(AI)モデルは正のフィードバックループで向上していく。ユーザーとの1つ1つのやりとりによって、さらなるデータが供給され、モデルの出力が洗練していく。こうしてユーザー体験が向上すると、ユーザーが入力するプロンプトが増える。すると、それがまた出力の向上につながり、このループが繰り返されていくという仕組みだ。
Googleのフラッグシップ生成AIモデル「Gemini」は、以前からこの上昇曲線に乗ってきた。そして今回、同モデルに加えられた更新は、GoogleがAIをめぐる競争の参加者として、自信を深めていることを示すものだ。
有料契約「Google AI Pro」プランユーザーの1日あたりのプロンプト数を倍増へ
Geminiアプリのリーダーを務めるJosh Woodward氏は米国時間6月4日付の「X」への投稿で、AI Proプラン契約者が「Gemini 2.5 Pro」を使う際、1日に送信できるプロンプト数の上限を、これまでの50から100に増やすことを明らかにした。
For @GeminiApp Pro plan members, we've just doubled your 2.5 Pro limit, from 50 to 100 queries per day. Thanks for using the model so much and messaging us wanting more! Enjoy!
— Josh Woodward (@joshwoodward) June 4, 2025
Googleは3月にGemini 2.5 Proを発表した際、「複雑なタスクを扱うものとしては(同社の中で)最も先進的なモデル」と説明した。OpenAIの「o3」やDeepSeekの「R1」と同じく、Gemini 2.5 Proはいわゆる「推論」モデルで、回答を提示する前に手順を踏み問題をじっくり分析することができるため、この名で呼ばれている。
Gemini 2.5 Proは5月に開催された年次開発者会議「Google I/O 2025」の大きな目玉だった。Googleはこの会議の中で、Gemini 2.5 Proをアップデートし、「Deep Think」と呼ばれる、「高度に複雑な数学とコーディングを対象とする実験的な推論強化モード」を追加すると発表した。
Geminiや「ChatGPT」を動かす「GPT-4」のような強力なモデルを機能させるには、大量のデータと電力が必要だ。その結果、こうしたモデルの開発者は計算処理の負担が過剰にならないように、ユーザーが質問できる1日あたりのクエリー数を制限することが多い。1日ごとにクエリー数の制限を課すのは、新しい実験的なモデルがハルシネーションの領域にそれていかないようにするための安全策でもある(そうなると、ユーザーの当惑を招き、ブランドの評判を損なうおそれがあるからだ)。
GoogleがGemini 2.5 Proについて、1日あたりのクエリー数の上限を倍増させたのは、新たなモデルの能力にGoogleが自信を持っていることの表れであるのと同時に、需要が増え続けていることを示すものでもある。Geminiアプリの月間アクティブユーザー数は、5月末時点で4億人を超えたと報じられている。ChatGPTの利用数のレベルにはまだ追いついていないものの、近づいてはきているということだ。

提供:NurPhoto / Contributor / Getty Images
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。