今日、業界や業種の垣根を超えてAIの利活用が進んでおり、筆者の所属するTricentisが実施した調査では、2025年に企業のソフトウェア開発チームの80%がAIを使用する予定と回答している。ソフトウェア品質のあらゆる側面にAIが組み込まれ、製品の開発サイクル、顧客体験、事業運営に効果を与えることで、品質保証(以下、QA)リーダーやエンジニアの競争力維持に必要な存在となることが予想される。本稿では、ソフトウェアテストを強化し、QAひいてはビジネスの成功に直結すると考えられるAIのトレンドを紹介する。
急速に拡大するAIの実行可能範囲
米国労働省労働統計局の調べによると、ソフトウェア開発者、QAアナリスト、テスターの雇用は、2033年までに、全職種の平均よりも大幅に速いペースでの成長が予測されており、こうした成長を促進する要因としてAIを挙げている。
テストチームがAIを導入する目的は、要件に基づきテストが必要な業務を特定すること、こうした領域のテストケースをこれまでに比べて著しく迅速に生成すること、自己修復/自動改善機能によってテストケースのメンテナンスを簡素化することなどが挙げられる。
このトレンドの背景には、企業のAI投資による効果がある。AIはコスト効率の向上、市場投入期間の短縮、品質向上に寄与しており、「The World Quality Report 2023-24」の発表では、企業の75%は、AIへの一貫した投資を行っており、AIを活用してQAプロセスを最適化している。また、企業の3分の2近く(65%)は、AI活用に伴う主な成果として、生産性の向上を挙げている。
テスト実施期間の大幅短縮
自然言語によるテストの自動生成や要件分析を通じ、生成AIは現在、テストケース作成の高速化で利用されている。テスターは特定の技術を使用することで、各テストケースのタイトル、前提条件、説明のほか、情報の詳細と予想されるテスト結果を含んだテストケースを数秒で作成可能だ。多くの場合、その影響はテストスイートの大幅増をもたらすが、これは一長一短ともいえる。
テストスイートが増加する中、スイートの的を絞るのに役立つものとして、「クオリティインテリジェンス」と呼ばれるAI拡張技術がある。クオリティインテリジェンスは、コード変更の影響とリスクを事前にピンポイントに特定することで、テストスイートの冗長性を最小限に抑えることができる。実際のリスク状況に基づき、必要なテストのみに優先順位を設定することで、テストのサイクル時間とコストを削減し、本番エラーのリスクを最小限に抑えることができる。