松岡功の「今週の明言」

NEC社長が意気込む「DXによるビジネスモデル転換」の中身とは

松岡功

2025-06-06 11:45

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏と、日本IBM コンサルティング事業本部 Cybersecurity Services X-Forceインシデント・レスポンス日本責任者の窪田豪史氏の「明言」を紹介する。

「BluStellarの売上規模を2030年ごろには国内ITサービス事業の7割に引き上げたい」
(NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏)

NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏
NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏

 NECの森田氏は、同社が先頃開いたデジタルトランスフォーメーション(DX)事業戦略についての記者およびアナリスト向けの説明会で、上記のように述べた。2024年度(2025年3月期)で32%だった国内ITサービス事業における「BluStellar」の売上比率をいつまでにどれくらい伸ばしたいかを聞いた筆者の質問に対し、2030年ごろには7割に引き上げたいとの意気込みを示したのが印象的だったので、明言として取り上げた。

BluStellarの事業概要(出典:NECの会見資料)
BluStellarの事業概要(出典:NECの会見資料)

 BluStellarは、同社が2024年5月にそれまでDXの事業基盤としてきた「NEC Digital Platform」を進化させ、価値創造モデルとして新たにブランド化して発表したソリューションだ。森田氏は発表時の会見で、BluStellarについて次のように説明していた。

 「NECが持つテクノロジーや人材、視点の全てを結集し、お客さまのビジネス変革を進め、未来へと導く価値創造モデルをブランド化した。お客さまの経営アジェンダを起点として、価値創造に向けた構想から実装までエンドツーエンドのビジネスモデルによって、お客さまと社会のDX人材を成功に導いていく」

 また、同社のDX事業責任者である執行役 Corporate SEVP 兼 最高デジタル責任者(CDO)の吉崎敏文氏も発表時の会見で、従来のシステムインテグレーション(SI)を中心としたITサービスとBluStellarの違いについて次のように説明していた。

 「従来は、個別のお客さまに対して当社の個別のアカウント部門がそれぞれの要望に沿った製品やサービスを提供してきた。それに対してBluStellarでは、当社がこれまでのITサービスで実績を上げてきたアセットやナレッジを『Scenario』(シナリオ)に集約し、お客さまの経営課題の解決に向けたコンサルティングからデリバリー、運用および保守まで、お客さまにとっての価値を提供していく」

 今回の会見でも、上記のような基本的な説明はあったものの、この後の質問の話を踏まえて、あえて両氏の発表時の発言を紹介した。今回の会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、筆者は今回の会見の質疑応答で次のように質問した。

会見で質問に答える森田氏(右)と吉崎氏
会見で質問に答える森田氏(右)と吉崎氏

 「現在3割ほどの国内ITサービス事業におけるBluStellarの売上比率をいつまでにどれくらい伸ばしたいか。一方で、従来の人月モデルによるSI事業も引き続き需要があり、NECが言う価値提供モデルへのITサービス事業の転換はそんなに進んでいないようにも取材の中で感じている。これはNECに限らず、日本のSIの問題とも言えるが、見解を聞かせてほしい」

 こう質問したのは、ITサービスにおけるビジネスモデルの転換という非常に重要な話だからだ。これに対し、森田氏は次のように答えた。

 「2030年ごろには7割くらいに引き上げたい。BluStellarでは有効なScenarioをどれくらい提供していけるかが事業成長のカギを握ると考えているが、それらを多様なニーズのお客さまにお役立ていただく際にも多少なりともSIは発生する。そのビジネスモデルとして人月計算が引き続き行われるケースもあるだろう」

 「ただ一方で、これまで人月モデルが中心だったITサービスのビジネスモデルが、ここ数年で価値提供モデルに着実に転換してきているのも事実だ。今後はBluStellarをさらに強化してお客さまに価値提供モデルをしっかりと評価していただけるように注力し、日本のITサービスの進化に貢献していきたい」

 「2030年ごろ」が早いか遅いかは分からないが、「7割」にはビジネスモデルの転換に本気で取り組もうという意気を感じた。この動きは引き続き、注視していきたい。

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