パナソニック エレクトリックワークス社は4月、主要拠点である大阪の西門真構内に厚生施設「厚生会館」(大阪府門真市)を「Culture Base.」としてリニューアルした。社員食堂のほか、ジェンダーレストイレなどを設け、ウェルビーイング空間として活用する。

「Culture Base.」
同社では、2022年からDEI(多様性・公平性・包括性)推進室を設け、取り組みを開始。社員と顧客のウェルビーイングを目指している。
パナソニック エレクトリックワークス社 DEI推進室室長の栗山幸子氏は「当社ではDEIを経営戦略の根幹に置いている。DEIが定着し、誰もが活躍できるようになれば、さまざまな戦略が実行可能になり、最終的には顧客におけるエンゲージメントを最大化できる」とDEIに対する考えを示す。

パナソニック エレクトリックワークス社 DEI推進室室長の栗山幸子氏
推進室が設立された2022年当時は、DEIの認知度がまだ低かった時期。そこでDEI推進室では「D(誰もが)E(遠慮は無しに公平に)I(一緒にイキイキ働ける)」という日本語のスローガンを作り浸透に努めたという。
独自のスローガンと同様に金太郎と宇宙人のイラストを紹介。「金太郎(あめ)は切っても切っても同じものが出てくる同質性の象徴。そこに宇宙人がやってきて、インクルージョンすると良いことが起きる。(こうした意味を込めて)この2人をイメージキャラクターにしている。金太郎ばかりが集まっていると閉鎖的になってしまう。新しい人を受け入れることで新しいことが生まれる」(栗山氏)と伝え方に工夫を凝らす。

同質性の象徴である金太郎(あめ)と宇宙人のイラストでDEIの理解を深める
栗山氏は「さまざまな事情を抱えていても、全員が仕事に参加できて、より付加価値の高い仕事に専念し、仕事以外の人生も充実できるようにする。そのためには短時間集中で心理的安全性がある中で質の高いアウトプットを出せる必要がある」とDEIの必要性を説く。
そこで「社員の幸せと顧客エンゲージメントの最大化」を目指し、ファーストステップとして、一人ひとりの力を高める「社員稼業」、セカンドステップとして、チームとしてアウトプットを最大化する「衆知経営」の2つに取り組む。
この2つを達成するために必要なのが、業務プロセスの改革。栗山氏は「DEIによってお互いを尊重し、意見を取り入れるため業務プロセスの改革ができ、業務プロセスの改革により一人ひとりの時間が生まれ働き方が変わり、DEIが進む」(栗山氏)と強調する。
パナソニック エレクトリックワークス社ではDEIを推進する上で、(1)アンコンシャスバイアスへの対応、(2)心理的安全性の醸成、(3)マジョリティー前提の仕組みの公平化――の3つを徹底。
その上で、具体的な施策として取り組むのは、トップコミットメントとボトムアップの両軸での推進だ。同社社長の大瀧清氏自らがDEIの重要性を繰り返し発信するほか、役員を交えた「DEIステアリングコミッティ」や経営会議などで議論を重ね、トップダウンでの意識浸透を図る。同時に、全国に約150人いるDEI推進リーダーによる活動や社長と現場社員の対話の場を設けるなど、ボトムアップで意見を吸い上げる。
活発に議論できる場を設けたことで、変化も生まれた。同社では男性社員による育児休暇(育休)の取得にも力を入れているが、実際に育休を取得した男性社員に話を聞くと、「育休期間の目安がほしい」という声が上がった。同社における育休の平均取得日数は25日であったが、こうした声を受け、2025年は育休期間を2カ月推奨という基準を設けたとのこと。
このほかにも、育児休業中の社員も昇格機会を失わないよう配慮した「復職時のキャリアロス防止」や、ハイブリッドワークの活用を推奨し、遠隔地介護などに対応する「ビジネスケアラー支援」、実技訓練が必須だった資格要件を見直し、技能があれば評価につながる「製造現場の評価要件の見直し」など、制度や仕組みの公平化に取り組む。
文化発信の拠点と位置付けるCulture Base.には、多様な社員が利用しやすい環境としてオールジェンダートイレを設置。既存ビルのトイレについても、従来、男性6対女性4だった面積を、男性1対女性1に改修した。このほか、さまざまな宗教に配慮した「祈祷(きとう)室」や社員が自発的に活動できる「リトリートマルシェ」といったスペースも設ける。

ジェンダーレストイレ。大きめの個室で区切られており、入り口にある表示から使用状況が分かる

祈祷室
栗山氏は「DEIはゴールではなく、目的。DEIを浸透させることで社員一人一人のウェルビーイングを実現していく。パナソニック エレクトリックワークス社では、これからも『誰もが遠慮なしに公平に一緒に生き生きと働ける』社会の実現に向けDEIを力強く推進していく」とした。
(取材協力:パナソニック エレクトリックワークス社)