トレジャーデータは6月5日、AIエージェントを搭載した次世代型マーケティングオートメーション(MA)「Engage Studio」の日本展開を本格化させると発表した。
Tresure Dataの共同創業者で最高経営責任者(CEO)の太田一樹氏は、市場調査を引用しながら、「SaaSの過剰導入」が企業における大きな課題となっていると指摘。また、SaaSの機能過多/複雑なインターフェースにより、ユーザーが機能を十分に使いこなすことができないといった課題に直面していると説明した。
さらに、従来型MAの主要製品の多くが1990年代〜2000年代初頭の創業であることから、AIを前提とした業務設計や即時性・柔軟性が求められる現代のニーズに対応できていないのが実情となっているとの認識を示した。
「市場で今求められているのは、統合されたデータ基盤を持ち、その上でAIが稼働し、さまざまな部門やユースケースに対応できる製品だ。これにより、複数のツールを個別に購入する必要がなくなる。このトレンドは、少なくとも今後3年から5年は続くと予想される」(太田氏)
同社の主力製品が顧客データ基盤「Treasure Data CDP」になる。顧客データの活用に特化したさまざまな機能を備え、企業のさまざまな部門、チャネル、システムに存在する顧客データを収集・結合し、「顧客のダイヤモンドレコード」を唯一無二の統合データとして作成する。

Tresure Data CEOの太田一樹氏
太田氏は、エンタープライズ企業を中心に国内外400社を超える導入実績を挙げ、直近ではグローバル企業での導入が加速していることを明らかにした。「現在、地球の人口は約80億人であり、そのうち50億人がインターネットに接続している。トレジャーデータのデータベースには現在30億人分のデータが格納されている。これは、インターネットに接続している人々の約6割に相当する。社会的に非常に意義のあるものに成長したと感じている」
同社は、2024年から「顧客データから顧客AIへ」という次なる進化に向けた取り組みを加速させているという。その上で、「顧客関連業務(マーケティング、セールス、顧客対応)」をAIが最も影響を与える業務領域として捉え、CDPとAIを土台とした「AIファースト」な製品群の提供に注力している。
「セールス、マーケティング、顧客対応の領域は、大規模言語モデル(LLM)だけでなく、自社のデータと組み合わせることが重要になる。例えば、汎用(はんよう)型のAIに企業固有のデータについて尋ねても、適切な回答は得られない。そのため、LLMと自社データを組み合わせて、最適化することが非常に重要なアプリケーションになると考えている」
このビジョンを実現するための第一歩として、同社は2024年に「AI Agent Foundry」の仕組みを開発し、CDPに蓄積された顧客レコードの上にAIエージェントを作成できる仕組みを構築した。「今後は、CDPとAIを土台とした『AIファースト』な製品群を提供していく」(太田氏)
こうした背景のもと、CDPの上に作られたAIファースト製品の第1弾として、2025年4月にEngage Studioの提供を開始している。
太田氏は、Engage Studioの特徴として「AIエージェントによる工数大幅削減」「リアルタイムAI Decisioning」「データ連携コストゼロ」の3つを挙げた。
「AIエージェントによる工数大幅削減」では、セグメントの設定やジャーニーの設定、メッセージの作成と配信といったメッセージ配信の全工程をAIエージェントがサポートし、最大80%の削減が可能という。既に国内企業で実施した実証では、メール作成工数の66%削減や投資収益率(ROI)向上といった成果も現れており、CDPとの連携による一貫したデータ活用の有効性が確認されているとのこと。
顧客の分析、可視化、抽出を対話形式で行うことができ、業界ごとのテンプレートを使用して顧客ジャーニーの作成を支援したり、キャンペーン内容に基づいて最適なメッセージを生成したりできるという。
「リアルタイムAI Decisioning」は、顧客の行動をリアルタイムに捉え、AIが最適なチャネルとタイミングで顧客にアプローチする方法を判断する。
「データ連携コストゼロ」では、CDPで作成した顧客レコードから直接メッセージを配信し、その結果はCDPにフィードバックされるため、データ連携の複雑さがない。追加データの移動無しで、全チャネルに一貫した体験を提供できるとしている。
トレジャーデータ 社長執行役員の三浦喬氏は、Engage Studioを市場に本格展開することで、日本国内での事業成長を加速させると強調。CDP市場に加えて、より市場規模の大きなMA領域に本格参入することで、顧客接点全体をカバーする統合ソリューションの提供を推進していくとしている。また、既に他社MAツールを活用している企業を中心に導入を進め、3年後には市場トップシェアの獲得を狙う。
Engage Studioの本格提供に合わせて、他社ツールからのスムーズな移行を支援する「Replace for Growthプログラム」も展開する。このプログラムでは、「システム移行エージェント」を活用することで、他社ツールからの移行工数を最大60%削減できるという。また、概念実証(PoC)の無償提供や、移行期間中の最大3カ月間のサブスクリプション無償提供も含まれる。先着20社限定となる。

トレジャーデータ 社長執行役員の三浦喬氏