ガートナージャパンは6月9日、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX) の取り組みとソーシング動向に関する調査結果を発表した。
調査は、3月に国内企業でIT調達に関わる担当者を対象に実施。DXを「デジタル技術 (AI、IoT、アナリティクスなどの技術)やデータを活用し、製品/サービス、ビジネスモデルの最適化や変革を推進・実現すること」と定義した上で、あらかじめ提示した8つの目的ごとの取り組み状況と、その主体となる組織を尋ねた。
目的として提示したのは、(1)既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化、(2)既存ビジネスの顧客体験価値や付加価値の向上、(3)既存商品やサービスの機能強化・品質向上、(4)新規事業等の新しい価値提案の創出、(5)新しい顧客ターゲットやチャネルの拡大、(6)新しい収益流(収益を得る仕組み)の確立、(7)デジタルやコネクテッドを前提とする新しい製品やサービスの開発、(8)既存/新規ビジネスを支えるデータやITインフラ等の基盤の整備――の8つ。
全ての目的においてDXの取り組みがあると回答した割合が7割を超え、DXへの取り組みはもはや企業にとって当たり前であることが分かったという。また、既存ビジネスに対する取り組みだけでなく、新しいビジネス創出を目的とした取り組みが広く拡大している状況も明らかになった。
ディレクター アドバイザリの中尾晃政氏は「注目すべき点は、どの取り組みにおいても、既存のIT部門が主導している企業の割合は一定数あり、中でも『既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化』や『既存/新規ビジネスを支えるデータやITインフラ等の基盤の整備』については、IT部門主導の割合が顕著に高い結果となったこと。ほかの目的では、取り組みを進める主導組織の多様化傾向が見られるが、Gartnerへの問い合わせ等も踏まえると、こうした取り組みにおいても、側方支援としてのIT部門の役割が欠かせなくなっている」とコメントしている。
デジタル・ビジネスへの取り組みの進展とともに、IT部門が今後目指す姿にも変化がみられている。IT部門が現在最も注力する役割と今後最も注力したい役割について尋ねると、「既存ビジネスを支えるシステムの開発や運用・保守」や、それらの「持続的な改善、効率化」と回答した企業は62%に上ったのに対して、IT部門による「DXへの間接的/直接的な貢献」を中心とする企業の割合は29%にとどまった。一方、今後において注力したい業務については、「DXへの間接的/直接的貢献」と回答している企業が29%から45%に拡大したという。

目的別の取り組み状況と主導組織
「半数近くのIT部門は今後DXへの貢献に注力したいと考えていることがうかがえるが、人材の不足や既存の業務負担の増大など、今後目指すIT部門の役割を実践するためには解決すべき深刻な課題も多い状況」(中尾氏)とのこと。
今回の調査では、現在のIT業務の内製/外製の状況について、6つの取り組みに関する状況を尋ねた。大部分を内製化できているとする企業の回答率が最も高いのは、自社のビジネスの変革に密接に関係するIT戦略や関連するシステムの導入企画立案だが、それでも4割以下(38%)になった。

IT部門が現在最も注力する役割と今後最も注力したい役割
そのほかのIT業務 (システムの設計・開発・実装、システムの運用保守、IT機器の導入と保全、セキュリティ管理、ユーザーサポートなどのヘルプデスク)の項目では、全て社内で対応できている企業の割合は少なく、社外のベンダーやリソースを活用せざるを得ない状況にあるとのこと。
中尾氏は「日本のIT部門の大きな課題は、質・量ともに人材不足が解消されない中、拡大するDXへの対応をIT部門としてどのように対応していくかにある。IT部門の中で全ての業務に対応することは非現実的であり、かといってこれまで頼っていたITベンダーに全てを任せられるかどうかも不透明。ITリーダーは、DXを前提としたIT部門とイン・アウトソーシングの在り方を再検討する必要性がでてきている」とコメント。
続けて「ソーシング戦略の策定に当たっては、ビジネス目標と照らし合わせ、関連する社内外のステークホルダーを巻き込みながら、その目標に従ってIT部門としてどのような役割を担うのかを明確にすることが重要。その上で、IT部門外の社内外のリソースを有効活用する選択肢として、どのような選択肢があり、それらの特徴や自社のニーズを考慮しながら、最適な選択肢を選んでいく必要がある。選択肢には生成AIなどテクノロジやサービスの活用も視野に入れること、そして、多様化するベンダー、人材あるいはサービスの管理力の強化を推進することも重要」だとした。