さらに、レッドハット 常務執行役員 技術営業本部長の三木雄平氏と、HashiCorp Japan ディレクターの伊藤健志氏が、ハイブリッド環境におけるシステム運用のアプローチをそれぞれ説明した。
システム運用でレッドハットは「Red Hat Ansible」、HashiCorpは「Terraform」を手掛けているが、共にオープンソースを源流としつつも、Terraformはインフラストラクチャー・アズ・コード(IaC)、Red Hat Ansibleはシステム設定の自動化を主眼に置いてきたとし、三木氏は「2つは競合ではなく補完関係にあり、共にIBMグループとなったことで、ハイブリッド/マルチクラウドのあらゆるシステムを包括的にカバーできる」とした。

(説明会資料より)
伊藤氏は、村田氏が言及した証明書の有効期限短縮化に触れながら、ハイブリッド/マルチクラウド環境でのセキュリティとコンプライアンスも重要だと指摘する。多様で複雑なシステム環境では、例えば、アイデンティティー(ID)管理やアクセス権限の不備をサイバー攻撃者に突かれることで、システムやデータなどへの不正アクセスを許し、マルウェア感染やデータ侵害といったさまざま被害がもたらされる恐れがある。
伊藤氏は、HashiCorpの「Vault」の活用により、特権など機密性や重要性が極めて高いIDや権限の検出と状態などの可視化といった適切なIDおよび権限の管理や証明書・鍵・シークレットの運用管理ができると説明した。
説明会の最後に登壇した日本IBM 執行役員 兼 技術理事(Distinguished Engineer) テクノロジー事業本部 プロフェッショナルサービス事業統括部長の藤田一郎氏は、ハイブリッド/マルチクラウド環境の統合と自動化においては、最高情報責任者(CIO)や最高情報セキュリティ責任者(CISO)の関与も重要だと述べた。
アプリケーションやインフラ、ネットワークといった各システム領域では、それぞれの担当者が運用管理を行っているが、CIOやCISOは各領域をまたいだシステム全体で網羅的に捉え、業務の視点からもシステムの状態を把握することが求められるという。

(説明会資料より)
IBMは、ネットワーク運用管理の「SevOne」や「NS1」、インフラ運用管理の「Turbonomic」、アプリケーション運用管理の「Instana」といった各種のオブザーバビリティ(可観測性)ツールを提供しており、藤田氏はこれらツールからのさまざまな情報をCIO/CISO向けに一元化するダッシュボードの開発中だと説明した。
藤田氏は、多様で複雑なシステム環境を一元的に把握できることで、セキュリティや障害などのリスク、各種法規制などへのコンプライアンスにもより適切な対応がとれるようになると述べる。

(左より)日本IBMの村田将輝氏、同上野亜紀子氏、レッドハットの三木雄平氏、HashiCorp Japanの伊藤健志氏、日本IBMの藤田一郎氏
最後に藤田氏は、IBMがメインフレームからオープン系システム、クラウドコンピューティングへと変遷していく過程でも一貫してITシステムプラットフォームに取り組んできたと説明し、今後AIが本格化していく将来に向けても安定・信頼あるシステムの接続を実現し、そのためにも自動化が必須だと強調した。