シトリックス・システムズ・ジャパンは6月10日、事業戦略説明会を開催した。仮想化基盤での実績を最適化したプラットフォーム戦略を説明し、GoogleやNVIDIAとの新たな取り組みを発表した。

Citrix Systems バイスプレジデントのDen Sullivan氏
Citrix Systemsは、2022年に投資会社のVista Equity PartnersとEvergreen Coast Capitalによる買収を受け、現在は米Cloud Software Groupの事業会社として活動している。説明会の冒頭、バイスプレジデントのDen Sullivan氏は、「当社には35年の歴史があり、その中核は仮想デスクトップ基盤(VDI)になる。VDIは、新しい領域と顧客やパートナーへの価値提供の柱になり、現在のミッションは、世界ナンバーワンのセキュアアプリケーションアクセスプロバイダーになることだ」と述べた。
同社は、Windowsアプリケーションの配信を祖業として、一時期はITインフラの仮想化基盤やクラウド基盤も手掛けた。現在はVDIソリューションを中核としつつ、ハイブリッド/マルチクラウドへのセキュアなアクセスが強みであるという。

Citrixのプラットフォーム構成(説明会資料より)
Sullivan氏は、「Windowsを含むあらゆるアプリケーションへのセキュアなアクセスを実現する。これはCitrixの資産であり、当社の未来になる」とも述べる。そこでプラットフォームのアプローチを採り、VDIやネットワーク負荷分散の「NetScaler」など従来製品の価値を最大化させたという「Citrix Universal Hybrid Multi-Cloud」と、これをベースにさらなるソリューションを活用できるとする「Citrix Platform License」の2つのサブスクリプションモデルの提供を基本に、ビジネスを展開している。
同氏は、これらにより顧客のあらゆるユースケースに対応でき、現在の企業顧客が求めるゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)のセキュリティを担保し、あらゆる場所やデバイスからのアクセスを実現し、安定した高速の接続性を最適なコストで顧客に提供可能だと強調した。

シトリックス・システムズ・ジャパン ジェネラルマネージャーの平井恵介氏
また、シトリックス・システムズ・ジャパン ジェネラルマネージャーの 平井恵介氏は、同社が企業顧客での働き方の変化に合わせながらプラットフォームを進化させてきたと説明する。直近の1年間も複数の企業を買収してプラットフォームを拡張させ、IT環境の複雑性の解消と統合化、運用管理の簡素化を特徴付けてきたという。
2025年3月には、複数のIT大手各社との新たな業務提携も発表。中でもGoogleとの協業では、Citrix Platform LicenseにGoogleの「Chrome Enterprise Premium」(CEP)ライセンスを標準搭載し、ZTNAとセキュアウェブブラウザーを組み合わせて利用できるようにした。またNVIDIAとは、Citrixのデスクトップ・アズ・サービス(DaaS)とNVIDIAの仮想GPU「RTX」を組み合わせたAIの開発から実装までのセキュアな環境を提供する。いずれも追加ライセンス不要で利用可能だという。
Googleとの協業についてテクニカルソリューション本部 リードアカウントテクノロジーストラテジストの武石隆治氏は、Citrix Platform License内のZTNAソリューション「Citrix Secure Private Access」とCEPを活用して、企業ではVDIやPC、モバイル機器などからのセキュアなアプリケーションの利用を柔軟に選択できるようになると説明した。

Googleとの協業ソリューション内容(説明会資料より)
また、NVIDIAとの協業についてテクノロジー・ソリューション部 統括本部長の竹内裕治氏は、NVIDIAと10年以上にわたるVDI高速化といった実績を基に、あらゆる環境やユーザー、デバイスであっても高い安全性や処理能力を必要とするAIの開発から展開までの環境を仮想化によって提供できるようになると述べた。

NVIDIAとの協業ソリューションのイメージ(説明会資料より)
なお平井氏によれば、現在の同社では、既存顧客への価値提供の最大化に主眼を置いているという。特に同社ソリューションを大規模に利用する顧客向けには、「Unified Services」と呼ぶ招待制の無償サポートを用意しているという。
テクノロジー・ソリューション本部 プリンシパルアカウントテクノロジーストラテジストの國分俊宏氏は、対応優先度を高めたミッションクリティカルサポートや、専門家によるインフラ設計などのガイダンス、またオンラインでの技術トレーニングなどを用意していると説明。顧客が短期的、長期的にCitrixソリューションへの投資価値を最大化していけるよう支援していると語った。