飯田市立病院、「Salesforce」を導入--生成AIと自律型AIで医療DXを加速

NO BUDGET

2025-06-11 14:44

 飯田市立病院(長野県飯田市)が、Salesforceの顧客関係管理(CRM)プラットフォームを導入した。生成AI「Einstein」と自律型AI「Agentforce」を活用し、医療現場の効率化と医療の質、患者サービスの向上を目指す。セールスフォース・ジャパンが6月11日に発表した。

 飯田市立病院は、地域の急性期医療を担う中核病院として重要な役割を果たしている。しかし、少子高齢化による医療・介護需要の増加、医療資材費の高騰、そして深刻な人手不足といった課題に直面していた。特に医療従事者やスタッフの業務負担軽減と生産性向上、心理的負担の低減が急務となっていた。

 これまでも同院は、医療業界の急速な環境変化に対応するためさまざまなシステムを導入してきたが、電子カルテの高度化には課題が多く、変化する医療現場のニーズに柔軟かつ迅速に対応できるプラットフォームの必要性が高まっていた。

 こうした背景から、飯田市立病院はノーコード/ローコードで医療現場に適したアプリケーションを迅速かつ安全に開発できる点を評価し、「Salesforce Service Cloud」を導入した。同院では、この標準機能を活用して「外部業者の来院予約システム」や「地域医療機関向けの活動管理・問い合わせ管理アプリケーション」などを開発し、その開発効率や拡張性の高さを評価している。

 具体的な取り組みとしては、Salesforceの医療向けプラットフォーム「Health Cloud」を電子カルテと連携させる計画だ。同ソリューションは医療データの標準化規格であるFHIR形式を採用している。日本政府が推進する「全国医療情報プラットフォーム」でもFHIRによるデータ標準化が進められており、これにより院外との患者の既往歴や検査情報の迅速な共有が期待される。

 また同院では、情報共有や文書作成にかかる負担が大きい中で、生成AIのEinsteinによる患者情報の収集支援や看護サマリー作成機能の開発を進めてきた。「Prompt Builder」を活用することで、職種ごとのニーズに応じた情報収集・文書作成が効率化できると期待している。Einsteinの効果が確認できたことで、自律型AIのAgentforceへの期待も高まっており、院内外からの問い合わせ対応など、負荷の高い業務を対象にAgentforceへのタスクシフトを進める検討をしている。

 さらに電子カルテ更改プロジェクトを契機に、院内外の関係者とのコミュニケーションツールとして「Slack」を導入し、その有効性を高く評価している。現在は、患者情報の収集およびタスク管理など、多様な業務への展開にも期待を寄せている。これに伴い、Slack上で動作する「Agentforce in Slack」についても、現場活用に向けた検証を進めているという。

 飯田市立病院では、人手不足や業務負担の増大といった課題に対し、Salesforceの柔軟性と拡張性は大きな効果を発揮しており、業務効率化に貢献していると評価している。将来的には、Salesforceの各種ソリューションを飯田市立病院の医療DXを推進する柱としていく方針だ。その上で、FHIRを活用したシステム連携の強化や、生成AI、自律型AIエージェントを中心とした高度な業務効率化と患者サービスの向上を目指すという。

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