Cisco Systemsは6月8~12日、米国カリフォルニア州で年次イベント「Cisco Live! 2025」を開催している。初日の基調講演では、会長 兼 最高経営責任者(CEO)のChuck Robbins氏と最高製品責任者(CPO)のJeetu Patel氏が、AI時代の到来とその影響、そしてCiscoの戦略と新たなソリューションを発表した。

会場には2万2000人が集まり、初日の基調講演は大いに盛り上がりを見せた。日本からは200人が参加したという

CEOのRobbins氏
Robbins氏は冒頭、「AI時代においてネットワークがかつてないほど重要になっている」と強調し、今回の重要なテーマとして「セキュリティとネットワークの融合」を挙げた。これは、AIの導入が非常に加速している現状に対応するためであり、AIを導入するには安全なネットワークが不可欠であると語る。
多くの企業がAIの導入が必要だと極めて強く感じているが、実際に導入の準備ができている企業はごくわずかであるという。また、世界的なAI競争という状況下で、企業はより迅速に行動したいという意欲を持っている。しかし、「彼らはセキュリティの不備を懸念している一方で、競合他社がより速く動き、自分たちにはない競争上の優位性を生み出すことも同じくらい懸念している」という。
同氏は、「エージェントAIの安全を確保するには、そのワークフローのネットワーク自体にセキュリティサービスを適用することが不可欠だと考えている。そして、当社が所有するテクノロジーでネットワーキングとセキュリティをシームレスに融合できる」と言い、AI時代における同社の独自性と貢献への強い意欲を示した。

CPOのPatel氏
次に登壇したCPOのJeetu Patel氏は、2020年11月に登場した「ChatGPT」のようなチャットボットの概念から、現在ではより限定的なエージェントや自律型システムに移行していると説明する。これは世界に多大な影響を与え、多くのポジティブな可能性を生み出す機会でもあり、また、エージェントやロボットなどが既存の労働力に参加することで、業務の幅が拡張されるとしている。
この変革を支えるためにはインフラストラクチャーの抜本的な進化が必要で、クラウドベースのアーキテクチャーだけでなく、クラウドとそのほかの技術を組み合わせた構造が不可欠になるという。「また、AIの影響力が増すことでデータセンターの容量の増強も必要になる。さらに、AIは本質的にネットワーク構造に依存するため、適切な防御策が必要になる 」とした。
同社はこのようなAI時代において、「AIに対応したデータセンターの構築」「将来にわたって利用できる職場の構築」「デジタルレジリエンスの確保」――の領域で顧客を支援するという。AI対応のデータセンター構築においては、AIワークロードをどこでも実行できるようにデータセンターを変革する必要があるとし、接続性と安全性の両面で世界クラスのインフラを提供する。将来にわたって利用できる職場環境の構築では、働く場所と使用するテクノロジーを多方面から近代化する。そして、デジタルレジリエンスの確保では、障害が発生しても機能し続けるように、インフラの回復力がある(レジリエント)ことを保障するという。

Ciscoが支援する3つの領域
AIに対応するデータセンター強化として、統合された「Nexusダッシュボード」を介した一元管理、「Cisco Silicon One」を基盤とした「NVIDIA Spectrum-Xイーサネット ネットワーキング」の統合を初めて実現するソリューションを提供する。これにより、企業は、効率的で信頼性の高いAIワークロードの展開が可能になるとしている。
統合されたNexusダッシュボードは、顧客から「Ciscoの資産管理を簡素化したい」という多くのフィードバックから実現したサービスで、2025年7月に利用可能になる。顧客は、ACIとNX-OS VXLAN EVPNファブリックを統合し、データ、制御、ポリシー適用、管理を統一することで、環境を横断したネットワーク運用を簡素化し、運用効率を向上できる。同サービスは、LAN、SAN、IPFM、AI/機械学習(ML)ファブリック全体でのサービスを単一の管理画面に統合する。これらの機能は、2025年7月にリリースされる次のNexusダッシュボードで利用可能になる。
また、CiscoとNVIDIAのインフラストラクチャーを連携させるためのリファレンスアーキテクチャー「Cisco Secure AI Factory with NVIDIA」が利用可能になった。次世代スイッチ「Cisco G200」にアプリケーション専用集積回路(ASIC)「NVIDIA Spectrum-X」を統合し、低遅延のクラスター内通信を実現するという。(関連記事)
Ciscoは、AI時代に向けた安全なインフラストラクチャーを構築しており、ゼロトラストと可観測性(オブザーバビリティ)を、シリコンからセキュリティオペレーションセンター(SOC)まで、ネットワークのファブリックに組み込んでいる。これまで、同社はセキュリティ機能をネットワークインフラに深く融合させ、企業がゼロトラストアーキテクチャーを実装することを支援してきた。また、脅威検出と修復を支援するAIツールも提供している。
今回、超高性能ファイアーウォール「Secure Firewall 6100シリーズ」「Secure Firewall 200 シリーズ」を2025年10月に提供開始することを明かした。6100シリーズは、データセンターファイアーウォールで最高のパフォーマンス密度(ラックユニット当たり200Gbps)とモジュラー拡張性により、AIに対応するデータセンターの複雑性やコスト、拡張性の課題に対処する。200シリーズは、競合製品と比較して最大3倍の価格性能で、分散型ブランチ向けに高度なオンボックス脅威検査と、統合されたソフトウェア定義型SD-WANを提供する。

あらゆるニーズに応えるファイアーウォール
Patel氏は、「われわれが直面している大きな問題の1つとして、ネットワークへのパッチ適用が非常に難しいこと」と述べ、この課題に対して「Live Protect」を提供すると発表した。これは、ネットワークデバイスに対する脆弱(ぜいじゃく)性シールドメカニズムで、脆弱性が存在する場合、数分以内にその脆弱性に対して補償制御やシールド、パッチが適用される。同サービスは、2025年9月にNX-OSから展開される予定だ。