サム・アルトマン氏が「シンギュラリティーは間近」だと語る理由

Webb Wright (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-06-13 07:27

 未来学者のRay Kurzweil氏は、2005年の著書「シンギュラリティは近い」の中で、機械の知能が人間の知能を超える瞬間であるシンギュラリティーが2045年頃に到来すると予測した。しかし、OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるSam Altman氏は、それがもっと近いと考えているようだ。

 Altman氏は、米国時間6月10日に公開したブログ記事で、同氏が間近に迫っていると考える人工「超知能」の登場について語った。人工汎用(はんよう)知能(AGI)は、一般的に人間と同等、あるいはそれ以上の認知能力を持ち、あらゆる知的作業をこなせるコンピューターシステムとして定義される。一方で、Altman氏は「超知能AI」はその枠を超える存在だと述べている。同氏によれば、超知能は人間の知性を圧倒的に上回るため、人間がそれを理解するのは困難であり、まるでカタツムリが一般相対性理論を理解しようとするようなものだという。

 ブログ投稿では、超知能AIの登場は避けられないものでありながら、社会がそれに備える時間を持てるほど段階的に進行すると捉えられている。一方でAltman氏は、過去5年間を振り返り、AIに対する認識が急速に変化したことを指摘している。以前は多くの人がAIについてほとんど知らなかったが、今では「ChatGPT」のような強力なツールが日常的に使われ、生成AIはごく普通の存在となっているという。」

 Altman氏は、「人類はデジタルな超知能を構築する段階に近づいているが、少なくとも今のところ、それは思ったより奇妙なことではない」と記している。

 同氏の文章は、超知能AIの到来を、初期キリスト教の預言者が再臨を記述する際のような言葉で描写しており、どこか宗教的な領域に踏み込んでいる。同氏は科学的かつ世俗的な言葉遣いをしているが、わずかながらも布教のニュアンスを感じざるを得ない。「2030年代は、これまでのどの時代とも大きく異なる可能性が高い」と述べ、さらに「私たちは人間レベルの知能をどこまで超えられるか分からないが、まもなくそれが判明するだろう」とも記している。

 AGI、そしてその先にある人工超知能は、テクノロジー業界において長らく議論の分かれるテーマである。Altman氏と同様に、多くの専門家はその実現が「起こるかどうか」ではなく「いつ起こるか」の問題だと考えている。報道によれば、Metaは超知能の開発に特化した社内研究機関の設立を進めているという。一方で、人間の脳を超えるような高度な機械の構築がそもそも技術的に可能なのかについては、懐疑的な見方も存在している。

 OpenAIは2022年後半にChatGPTを公開して以来、世界的な注目を集める存在となった。それ以降、同社は目覚ましいスピードで次々と新たなAI製品を発表してきたが、その急速な開発ペースが安全性の軽視につながっているのではないかという懸念も生じている。このような懸念から、OpenAIを離れる社員が相次いでおり、多くは元社員が設立したAI企業Anthropicに移籍するか、自らスタートアップを立ち上げている。例えば、OpenAIの共同創業者で元チーフサイエンティストのIlya Sutskever氏は、2024年6月にSafe Superintelligence(SSI)という新会社を設立した。

 AI開発者たちは、将来的に何百万人もの人々が職を失う可能性があるにもかかわらず、その対策となる具体的な方針を提示しないまま、人間の仕事を自動化することに突き進んでいるとして、広く批判を受けてきた。Altman氏の最新のブログ投稿も、テック業界のリーダーたちの間で繰り返されている主張を反映している。それはつまり、一部の仕事は確かに失われるが、最終的にはテクノロジーが新たな職種を生み出し、失われた雇用を補うというものだ。さらに同氏は、AIが人類全体に膨大な富をもたらすことで、人々は仕事に縛られず、より意味のある活動に時間を使えるようになると述べている(ただし、その「意味のある活動」が何を指すのかは明確にされていない)。また、自身が描くテクノロジー主導の理想社会に向けて、ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の導入を支持しており、それが社会全体の適応を支える手段になると考えている。

 同氏はブログの中で、「技術の進化は今後も加速し続けるだろうし、人間はほぼ全ての変化に柔軟に対応できるという事実は変わらない」と述べている。また、「一部の職業が失われるなど、困難な局面も避けられないが、世界が急速に豊かになることで、これまで想像もされなかったような新しい政策を真剣に検討する余地が生まれるだろう」とも記している。

 OpenAIは、設立から10年の間に急速かつ大きな変化を遂げてきた。創業当初は非営利団体として、名前の通りオープンソースのAI研究を推進することを目的としていた。しかしその後、GoogleやMetaといった大手企業と肩を並べる営利企業へと成長を遂げた。同社の長年の使命は、「汎用人工知能が人類全体に恩恵をもたらすことを確実にすること」である。

 Altman氏のブログ投稿からは、OpenAIがさらに高い理念を掲げていることがうかがえる。同氏は「私たちは何よりもまず、超知能の研究に取り組む企業である」と明言している。

提供:NurPhoto/Contributor/Getty
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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