松岡功の「今週の明言」

就任5年目に入ったNEC社長が今一番気にかけていることは何か

松岡功

2025-06-13 11:05

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、NEC 取締役 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)の森田隆之氏と、セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部長の三戸篤氏の「明言」を紹介する。

「経営チームで課題感を共有しながら、より強い会社にしていきたい」
(NEC 取締役 代表取締役社長 兼 CEOの森田隆之氏)

 NECの森田氏は、同社が先頃開いたメディアのグループインタビューで、「今一番気にかけていることは何か」と聞いた筆者の質問に、上記のように答えた。実は、この質問には筆者なりの意図を込めたところもあるので、上記の回答を明言として取り上げた上で、後ほど解説したい。

NEC 取締役 代表取締役社長 兼 CEOの森田隆之氏
NEC 取締役 代表取締役社長 兼 CEOの森田隆之氏

 グループインタビューは、森田氏が20人ほどの記者と最初から質疑応答によってやりとりする形式で行われた。ここでは、さまざまな質問が出た中から、筆者が注目した内容を幾つか取り上げる。

 まずは、業績目標の考え方について。業績の目標については、売り上げと利益のどちらを重視するかという論議があるが、この点について、同氏は次のように述べた。

 「私は、経営目標としては利益を重視している。売り上げももちろん大事で、市場の成長以上に伸ばしていく必要があるが、いつも両方を追えるとは限らない。売り上げについては、競争力があれば自然に伸びていくし、合併・買収(M&A)を行えばすぐに上げることができる。また、売り上げを重視すると、経営スタイルが先行投資型になり、リスクに対して甘くもなる。このパターンは当社が昔、間違って進んでしまった道だ。利益をどれだけ拡大させていくかに今後も尽力していきたい」

 この発言には、経営者としての矜持を感じた。ちなみに、筆者はかねて「売り上げを伸ばすことこそが経営者の一番の役目だ」と考えていたが、今後、先入観を持たないようにしたい。

 次に、NECの強みについて、同氏は次のように語った。

 「当社は、エンジニアリング力だけでなく、サイエンス(科学技術)力を保持していることが強みだ。例えば、顔認証技術やAIを最初から作る技術、広帯域の光通信伝送の技術などを自社で保有している。これらを独自の価値に転換していくわけだが、まずはこうした力を保持していることが重要だ」

 この発言は、同社が注力しているデジタルトランスフォーメーション(DX)事業の「BluStellar」(ブルーステラ)の強みを問われて答えたものだが、NECそのものの強みと捉えていいだろう。

 最後に、筆者の質問を。「社長に就任されて5年目を迎えられたが、ビジネス面とマネジメント面それぞれに、今一番気にかけておられることは何か」と聞いたところ、森田氏は次のように答えた。

 「ビジネス面では、BluStellarの事業をNECグループ全体で注力し、さらに拡大させていくことだ。それも合わせて、日本企業としてグローバルで尖った事業を幾つか推進していけるようにしたい。マネジメント面では、2年ほど前に最高執行責任者(COO)や最高財務責任者(CFO)、最高人事責任者(CHRO)などとともにトップマネジメントチームを結成して、それ以降、会社の日々の動きから今後の見通し、課題感を共有しながら、取り組んできた。創業126年目を迎えた会社として、これまでの伝統を継承しながら新たに発展させていくにはどうすればよいか。時間と共にチームのメンバーも代わっていく中で、それをどのようにスムーズに進めながら、より強い会社にしていくか、日々考えている」

 こう述べた同氏は、「これで松岡さんの質問の主旨にお答えしたと思うが」と呟いてニヤリ。つまり、「この質問には、(社長の)後継者について気にかけているのかという意図があるのだろう」と読まれてしまったということだ。ズバリ、その通りである。とはいえ、このやりとりは、筆者なりに価値があったと手前みそながら感じている(この記事が書けたので)。

 NECにとって2025年度(2026年3月期)は現行の中期経営計画の最終年度。その関係の質問も相次いだが、筆者は個人的に森田氏がこれから世代交代をどうスムーズに進めるか、注目していきたい。

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