UiPathは6月12日、次世代の自動化プラットフォーム「UiPath Platform for Agentic Automation」を発表した。AIエージェント、ロボット、人間を単一のインテリジェントシステムに統合する仕組みとして、「エージェンティックオートメーション」の実現を目指す。

UiPath 製品戦略担当バイスプレジデントのFeiran Hao氏
米国UiPathの製品戦略担当バイスプレジデントであるFeiran Hao氏は、同社が「UIオートメーション」からスタートした経緯を振り返り、ユーザーのPC上でのマウス操作やキーボード入力を自動化する機能を開発してきた最初の10年間を“ACT 1”と定義した。そして現在は「エージェンティックオートメーションの新時代」として“ACT 2”と位置付けている。
Hao氏によると、UiPathが最初に注力していたのはUIの自動化やロボットによる業務自動化(RPA)であり、これがACT 1の中心だった。同社の創業は2005年だが、同社は2018年をUIオートメーションの本格的な始まりと位置付けており、ACT 1はそこからの10年間を指す。

2018年以降のUiPathのオートメーションへの取り組みの経緯
一方で、2020年頃から2023年にかけて生成AIが急速に台頭したことで、UiPathはこの技術の活用を模索し始めた。ロボットと人間の連携に加え、AIエージェントという新たな要素が加わることで、三者の協調(オーケストレーション)を再定義する必要があると認識し、これがACT 2、つまり「エージェンティックオートメーション」への取り組みの始まりとなる。
ただしHao氏は、ACT 1とACT 2はどちらかを選ぶものではなく、両者を組み合わせて活用することが重要だと強調した。古い技術が新しい技術に取って代わられるのではなく、それぞれの技術が補完し合い、全体としてより高度な自動化を実現するという考え方だ。

ACT 1とACT 2のそれぞれの技術内容
UiPathのプロダクトマーケティング部 部長である夏目健氏は、同社の具体的なソリューションについて説明し、12日付で「UiPath Agent Builder」と「UiPath Maestro」の国内提供を開始すると発表した。

UiPath プロダクトマーケティング部 部長の夏目健氏
UiPath Agent Builderは、カスタマイズ可能なAIエージェントの構築・評価・デプロイを支援するツールになる。UiPath Maestroは、AIエージェント、ロボット、人間の連携による業務プロセスの設計・実装・運用・可視化を可能にする、エージェンティックオーケストレーションのための中核的なツールである。
さらに、現在プレビュー中の関連機能として、「IXP(Intelligent Xtraction & Processing)」(ドキュメントやコミュニケーションから必要情報の特定と抽出)、「Data Fabric」(ノーコードのデータモデリングとストレージ機能)、「API Workflows」(API統合およびデータ操作に最適化されたワークフロー)、「Agentic UI Automation」(大規模アクションモデル 〈LAM〉の活用によりUIの変化に対応した画面要素の認識機能)が紹介された。

新たに提供開始された新製品とプレビュー中の製品/機能の概要
夏目氏は、UiPath Agent Builderのプレビュー段階での成果として、「プレビュー登録が4000以上」「150社以上で利用またはPoC(概念実証)実施」「作成されたエージェントは2200以上」といった実績を挙げ、十分な検証を経た上でのリリースであると強調した。
エージェンティックAIの実用化により、業務プロセスの自動化は新たなフェーズに突入した感がある。既にこの分野で積極的に取り組む企業も多く、UiPathについてはやや出遅れた印象も否めない。とはいえ、AIエージェントにはハルシネーションや誤動作といったリスクが存在するため、あらゆる業務プロセスをAIエージェントで自動化することが最適解とは限らない。
従来のRPAなどの自動化技術で対応可能な領域については、これまで通りの手法で自動化を進めつつ、AIエージェントの適用範囲を段階的に拡大していくというアプローチは、実績を積み重ねてきた同社にとって有利な要素となる。
UiPathが打ち出した「ACT 1とACT 2の組み合わせ」というメッセージがユーザー企業にどのように受け止められるかは、急速に進化するAIエージェント市場の動向と合わせて注視すべきである。

新たな製品戦略。赤色で示されたACT 1の土台の上に新たなACT 2の取り組みを積み上げていく形が示された