ネットワーク技術展示会「Interop Tokyo 2025」が6月11~13日、千葉市の幕張メッセで開催された。Interopのインフラを支えるShowNetは、5年後、10年後に必要となるネットワークの姿を示すことをビジョンに、さまざまな最新ネットワーク技術・機器などを相互接続している。このネットワークの安定性や通信品質など確保に不可欠な監視について、ShowNetのネットワーク運用センター(NOC)チームでモニタリングを担当する岩本裕貴氏と神山卓哲氏が取り組みを紹介した。
2025年のShowNetは、「ShowNet is your Network」がテーマ。メーカーから提供された機器や製品、サービスは約2300種類、Unshielded Twisted Pair(UTP)の総延長は約24.8km、光ファイバーの総延長は約7km、コンセント数はNOCのラックで約200個、会場内に配備するPOD(Pedestal Operational Domain)では約100個になる。NOCチームメンバーは32人、ボランティアが42人、ベンダーなどから応援で参加するコントリビューターが754人となる。
まず説明を行った岩本氏によると、ShowNetのモニタリングは、出展社や来場者などへの安定したインターネットサービスの提供に加え、Interop開催日を含むShowNetの構築~撤収が約2週間となることから予期せぬ障害が起こりやすい。設定や配線の人為的なミス、配線整理での意図しないケーブルの抜け、機器のバグに起因する障害がある。また、空調管理が徹底されているデータセンターとは異なり、外気から温度や湿度の影響を非常に強く受ける点が特有だという。

ShowNetのモニタリングの特徴
また、2週間のうちラック設備からバックボーンネットワーク、サーバーやストレージ、モバイルサービス、セキュリティサービス、インターネット接続サービスと、ShowNet構築作業の段階が進むにつれて監視の要件も都度変化する。2025年の場合は、5月30~31日のホットステージ前期では温度や湿度、機器の死活、Syslog受信、6月1~6日の同後期ではSNMPやSyslog、各種フロー、テレメトリー、アラート通知、デプロイ日の同7~10日ではPODに監視エージェントを設置し、品質管理やアラート条件の精査を行う。そして、本番の同11~13日では安定稼働のための運用になる。
岩本氏は、2022~2024年のモニタリングでの取り組みを紹介した。まず2022年は、「現状分析と予兆検知を融合した監視システムの確立」がテーマ。同年は、特にマルチクラウドで監視環境を準備し、「East」(東)と「West」(西)の2つのリージョンに分けて冗長化構成としたほか、当時は機械学習(ML)が注目されたため、MLを応用したデータ学習にも挑戦。例えば、通信機器とファイアウォールの帯域変化を学習させ、予測していったという。

2022年の主な取り組み
2023年は、「パフォーマンス計測と詳細分析を組み合わせた監視基盤の実現」がテーマだった。この時は、会場内のPODにアクティブ品質監視エージェントを設置し、インターネット側のサーバーとTWAMPのセッションを確立して遅延などを測定した。また、放送映像などのメディアデータのIP伝送(Media over IP)も始まり、「SMPTE 2110」の映像ストリーム解析にも取り組んだという。

2023年の主な取り組み
2024年のテーマは、「AI技術とUX(ユーザー体験)監視の応用でShowNet基盤を支えるモニタリングシステム」となった。上述のアクティブ品質監視エージェントを活用して、TWAMPによりICMPのPingやトレースルート、HTTPリクエストなどの点からユーザーがどの程度インターネットを快適に利用できているのかを定量化し、分析したという。また、大規模言語モデル(LLM)の利用も流行になり、Syslogを基に自然言語のプロンプトで障害を分析する試みも始めた。

2024年の主な取り組み