パナソニックが目指す止めないネットワーク--安心と高品質を実現する出荷前検査

加納恵 (編集部)

2025-06-24 06:30

 パナソニックの子会社であるパナソニックEWネットワークスは、法人市場(BtoB)向けのネットワーク機器市場において、「安心」と「高品質」を打ち出し、差別化を図っている。家電や住宅設備開発などで培った技術力と顧客目線でのものづくりを武器に、安定かつ運用しやすいネットワークソリューションの提供を目指す。

 パナソニックEWネットワークスにおけるネットワーク機器の歴史は古い。1989年の設立時からネットワークの設計、構築、運用、保守などを手掛け、2001年には自社開発によるスイッチングハブの製造をスタート。現在では、入退室管理システムやカメラといった設備セキュリティ領域にまで事業を広げている。

 5月には、全ポート10Gbpsに対応したスイッチングハブ「XA」シリーズとクラウド管理型無線アクセスポイント「AIRRECT(エアレクト)」シリーズを発表。IT人材の不足やクラウドサービスの浸透など、ネットワーク環境が大きく変化する中、これらの課題を解決するソリューションとして提供する。

XAシリーズとAIRRECTの接続例
XAシリーズとAIRRECTの接続例

 ネットワーク環境の変化として、商品企画部 商品企画課 課長の吉國雄貴氏は、(1)深刻なIT人材不足、(2)クラウドサービスの浸透、(3)新規格Wi-Fi7への対応、(4)GIGAスクール構想第2期のスタートーーの大きく4つを挙げる。

 「ネットワークスキルが間に合わず、高度な設定ができない現場が増えているとともに、学校のIT化であるGIGAスクールの第2期が始まり、オフィスだけではなく、学校でもネットワーク環境の構築が必要になっている」と話す。GIGAスクール構想だけを見ても、第1期では文部科学省が定めた推奨帯域を満たしていない学校が8割に上るなど、環境は整っていない状態。市場全体を見ても「通信品質の悪さに課題を感じているという声が出ている」(吉國氏)と、増え続けるネットワーク対応機器に対し、通信環境の整備が追いついていない状況だ。

全ポートの通信確認をする徹底した検査体制

 こうした中、発表されたXAシリーズとAIRRECTは、「現場の声」がふんだんに盛り込まれている。XAシリーズは全ポート10Gbpsに対応し、Wi-Fi 7などの高速無線LANや大容量のデータ転送をサポート。 1ポート当たり最大90W給電ができるPoE給電能力により、Wi-Fi 7対応のアクセスポイントやリモートカメラなど、より多くの電力を必要とするデバイスへの給電に対応する。

 USBメモリーからファームウェアの更新や設定の復元ができるUSBブート機能に加え、接続機器のフリーズを検知し、自動で再起動する「オートリブート機能」を備え、現場での容易な復旧作業とリモートからトラブル解決ができる環境を整える。

 「オートリブート機能はリモートからアクセスポイントを再起動することで、工数やコストをかけずに現場の困りごとをスムーズに解決できる機能。都度課金などではなく、製品サービスに組み込んで提供しているのが私たちの強みの一つ」(吉國氏)と現場対応力を打ち出す。

 現場対応力とともに力を入れるのが雷サージ耐性だ。XAシリーズでは、雷サージ耐性10kVを標準装備し、接続している機器を落雷からの故障から守る。一般的な国際規格(IEC)である4kVをはるかに超える雷サージ耐性を実現できた背景には、パナソニックならではの品質管理と製品試験が大きく寄与している。

 「スイッチングハブは、雷の影響を受け、ポート故障の事例が非常に多い。これにより内部のICが破損し、使えなくなってしまう。こうした現象を受け、XAシリーズでは電源側だけでなく、ポートの1つ1つに電源側同等以上のレベルで雷に強い保護機能を搭載している。これにより電気的ストレスに非常に強い製品になっている」(商品開発部 商品開発一課 課長の今西宏行氏)と説く。

スイッチングハブ「XA-AML8TFPoE++」「XA-AML16TFPoE++」「XA-AM16T」
スイッチングハブ「XA-AML8TFPoE++」「XA-AML16TFPoE++」「XA-AM16T」

 パナソニックでは、大阪府門真市に各種試験ができる試験棟を完備。これにより、国際規格を上回る雷サージ耐性を持つ商品開発につなげている。「試験専用の施設を持っているのはパナソニックならではの強み。試験棟では最大15kVまでの雷サージ試験ができる。日本でもそこまでも設備を備えているところは少ない」(今西氏)とする。

 試験項目は「放射妨害電界強度試験」「放射妨害電界強度試験」「断線スパーク試験」など多岐にわたり、商品を出荷するまでには150種類の独自試験をクリアしなければならない。

 加えて、国内の工場で実施している出荷前検査では全ポートの通信確認を実施。熟練のスタッフの目と手で1台1台を検査することで、高い品質を維持する。

 全ポートの通信確認は、初期不良率の低減につながり、これによりシステムインテグレーター(SIer)のの追加検査が不要なるなど、設置時における効率化にも貢献する。「(出荷前検査は)止めない通信を実現するために実施しているもの。これが顧客のコスト削減にもつながる」(吉國氏)とする。

 社内にもSIer部隊を持ち、現場のネットワーク構築も請け負うパナソニックEWネットワークスならではの配慮が製品検査にも生きる。「オートファン機能やメンテナンスモードの実装など、現場にいるSIerからの声を取り入れ『かゆいところに手が届く』機能を搭載している。セキュリティ面でも『IEEE802.1X認証』を搭載することで、不正アクセスを防ぎ、安全なネットワーク環境を実現している」(吉國氏)とする。

 こうしたこまやかな対応は、AIRRECTも同様だ。日本語GUIに対応し、使いやすさを追求。クラウド機能により、遠隔から多拠点管理ができ、保守運用者やSIerの負担を軽減する。

 「アクセスポイントはクラウド管理できる点が大きなメリット。接続しているPCの数やトラフィック量だけでなく、障害発生状況もリモートから監視できるため、多拠点を持つ企業や学校のリモート監視に貢献する」(商品開発部 商品開発二課 主事の奥道哲也氏)と強調する。

 本体には、2つの10Gbpsインターフェースを備え、冗長化することで、片側の通信に断線が発生しても、途切れることのない安定した、高速通信を提供。2026年1月に発売予定のWi-Fi 7モデルでは、高速化技術「MLO(Multi-Link Operation)」機能により、6GHz、5GHz、2.4GHzの3つの周波数帯を同時に接続でき、より安定した通信を実現する。

無線アクセスポイント「AIRRECT AP-7410」
無線アクセスポイント「AIRRECT AP-7410」

 アクセスポイント、PoEスイッチ、そしてPoE非対応の集約スイッチまでをそろえ、次世代の無線システムを「オールパナソニック」で提供できる環境を整えるパナソニックEWネットワークス。壊れにくく、使いやすいという特徴に「サポートが手厚い」という強みを加え、IT人材が不足する教育現場や中小企業におけるIT環境の課題解決に貢献していく。

(左から)パナソニックEWネットワークス 商品開発部 商品開発二課 主事の奥道哲也氏、商品企画課 課長の吉國雄貴氏、
商品開発一課 課長の今西宏行氏、営業本部 マーケティング部 企画課の古賀健一朗氏
(左から)パナソニックEWネットワークス 商品開発部 商品開発二課 主事の奥道哲也氏、商品企画課 課長の吉國雄貴氏、 商品開発一課 課長の今西宏行氏、営業本部 マーケティング部 企画課の古賀健一朗氏

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