人に代わってさまざまな業務を自律的にこなす「AIエージェント」が、これから企業でどんどん活用されていきそうだ。そうした中で、会社として、組織として、個人として、それぞれやるべきこととは何か。Gartnerの見解から探りたい。
会社に求められる「時代変化対応と競争力強化」

ガートナージャパン ディスティングイッシュト バイスプレジデントでアナリストの亦賀忠明氏
今回の話題は、Gartnerが6月12日に開いたウェビナーで、ガートナージャパン ディスティングイッシュト バイスプレジデントでアナリストの亦賀忠明氏が生成AIとAIエージェントの最新トレンドをテーマに解説した内容を基に、AIエージェントの活用について筆者の考察も述べたい。
亦賀氏の解説で筆者が注目したのは、AIエージェントを活用していく上で、会社として、組織として、個人として、それぞれやるべきこととは何かについてだ。
表1が、会社としてやるべきことだ。

(表1)会社としてやるべきこと(出典:ガートナージャパン「6月12日ウェビナー」資料)
亦賀氏は、「会社がやることのマインドセットとして挙げられるのは、『時代の変化への対応』と『競争力の強化』だ。そのためには武器を使って戦っていかなければならない。その武器というのが、まさしくAIをはじめとしたデジタル技術だ。ただし、武器を手にするだけでは駄目で、それを人がきちんと使えるようにすることが非常に大事だ」と説明した。
一方で、「武器の使い方については、社会的な規範を徹底することが重要だ。まずは『うそをつかない会社であること』だ。また、『バイアスや差別的表現への注意と理解』、さらには『AIは人を補完する存在であるという基本認識』も大事だ」とも述べた。
表現としては、アンチパターン(やってはいけないこと)の方が刺激的かもしれない。「雇用や人件費削減にのみフォーカスする」や「ベンダーに丸投げ」といった問題は、引き続き注視していく必要がある。また、「人のハルシネーション(もっともらしいうそ)を放置する」こともさもありなんだ。場合によっては、AIよりも深刻な問題である。
表2が、組織としてやるべきことだ。制度や文化、環境の整備についての話である。

(表2)組織としてやるべきこと(出典:ガートナージャパン「6月12日ウェビナー」資料)
亦賀氏は、「組織がやることのマインドセットとして挙げられるのは、とにかく『人を大事にする』ことだ。いろんなことを安心して試すことができる文化を醸成し、小さな成功事例や活用の工夫を組織内で共有することが大事だ」と説明した。
アンチパターンとしては、「利用を強制する」「操作だけの研修や正解の提示で終わる教育」「活用の自由度を奪う一律的なルール設定や評価制度」といった点を挙げている。
加えて、筆者が、組織というより「チーム」という単位で述べておきたいのは、AIエージェントを業務でうまく使いこなすのはチームの果たす役割が大きいのではないかということだ。業務自体もチームで進めるケースが多く、そのメンバー間でAIエージェントとの上手な「付き合い方」を共有すれば、本来の目的である業務の生産性向上に効果的だと考える。