IDC Japanは6月19日、国内AIインフラストラクチャー市場の2024年の実績と最新予測を発表した。それによると、市場規模は前年比120.0%増の4950億円に達し、経済産業省の助成金を活用した投資拡大が背景にあるという。
同社は、AIインフラストラクチャー市場をAI関わる学習や推論に利用されるサーバーとストレージで構成されると定義。市場規模は、ベンダーの売上額にマージンを加算した支出額で算出した。OEMおよびODMから大手クラウド事業者(ハイパースケーラー)などへの直接出荷分を合算したサーバー分野と、OEMによるストレージ分野の2つに分類し、2024年の同市場は、サーバー分野が同122.0%増の4780億円、ストレージ分野が同75.6%増の170億円だったと分析している。
この背景には、「経済安全保障推進法」に基づく経済産業省のクラウドプログラムの安定供給確保を目的としてクラウド事業者への助成金などの支援があり、GPU搭載サーバーを中心とする国内資本のクラウド事業者によるAIクラウドサービス基盤への投資の加速があったとしている。
2024年4月時点の認定事業者は累計9社(共同申請は1社として算定)あり、最大助成額は合計で1250億円超だった。同社は、助成金の範囲が事業者の申請事業計画における投資額の3分の1(一部は2分の1)となるため、実際の投資規模はこれらの2~3倍になると解説。この投資の一部がGPU搭載サーバーに充てられるなど、2024年は助成金を活用した国内資本のクラウド事業者による投資、さらには世界的なハイパースケーラーなどによる長期的な日本へのAI投資がAIインフラ需要を押し上げたという。
今後の見通しで同社は、助成金を活用した国内資本のクラウド事業者によるGPU搭載サーバーへの投資が2027年まで続き、ハイパースケーラーなどによる投資も堅調に推移すると予測。さらに政府系や大学など研究機関でのAI関連案件も加わると見ている。
将来予測では、2025年が同3.5%増の5120億円とし、2026年以降も成長を維持して2029年に6530億円に達するとした。5年間の年平均成長率(CAGR)は5.7%と試算している。
同社 Enterprise Infrastructure リサーチマネージャーの福冨里志氏は、国内で生産年齢人口の継続的な減少が見込まれ、多くの企業が業務自動化、効率化、高付加価値化、数値化し切れていない経験値やノウハウ継承などの課題に直面していると指摘。これら課題にAI活用が有効な解決策の一つとなり得るため、クラウド経由でGPU搭載サーバーを利用できる基盤整備も進み、企業の積極的な活用が望まれる」とコメントしている。