日立製作所と東京大学は、ビッグデータ分析の高速化に向けて、相互に複雑なつながりを持つグラフ構造データの検索速度を大幅に向上する「動的プルーニング技術」を開発した。製造業の製品出荷判定を対象にした検証では、データ検索速度を従来比で最大135倍向上できることを確認。日立が6月19日に発表した。

開発技術の適用イメージ(トレーサビリティー問い合わせ例:徹底的な製造検査)
これまでグラフ構造データを順次たどる処理では、「再帰問合せ処理」と呼ばれる手続きが用いられ、不要なデータの繰り返し読み取りにより検索速度が低下する課題があった。開発した技術は、再帰問合せ処理で得られる情報を活用し、次に読み取るデータ範囲をリアルタイムで正確に特定することで不要な読み取りを削減し、検索速度を大幅に向上させる仕組みだ。
この技術により、製品の設計から製造、流通、保守に至る工程や部品追跡といったグラフ構造データの分析業務が迅速化され、トレーサビリティーの品質向上が期待される。
日立では本技術を超高速データベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder(HADB)」へ組み込み、既に提供を開始している。さらに、この技術を適用したHADBは、生産工程の業務とデータの関係性をデジタル化する「IoTコンパス」や、IoTやデータ活用を支援する「Hitachi Intelligent Platform」でも利用できるとのことだ。
今後、日立と東大は製造業のほか、社会保障での診療パターンの分析による疾病リスクの予測や金融分野での不正アクセスの検出などへの本技術の適用を目指すとともに、社会課題の解決に向けた技術革新を推進していく。
なお、成果の一部は、6月22日から27日にドイツのベルリンで開催されるデータベース分野の国際会議で発表予定となっている。