リコージャパンは、2025年度の事業戦略を発表。2024年度に掲げた(1)業種業務課題を解決するデジタルサービス事業の拡大、(2)地域・社会課題解決に向けた価値提供領域の拡大、(3)高効率な市場カバレッジ体制の再構築、(4)課題創造型体質への変革に向けたデジタル人財への投資拡大、(5)社内DXの加速と経営品質の向上――の5つの主要戦略をそのまま踏襲した。
リコージャパン 代表取締役 社長執行役員 最高経営責任者(CEO)の 笠井徹氏は、「中堅、中小企業のお客さまにはリコージャパンに全てを任せてもらえる環境が整っている。デジタルの力で、お客さま、地域、社会の課題を解決することを目指し、2024年度から継続している主要戦略をさらに加速していく」と語った。

リコージャパン 代表取締役社長執行役員 CEOの笠井徹氏
また、2025年8月を目標に、「RICOH デジタルバディ」と「営業支援」を組み合わせたAIエージェントのベータ版の提供を開始することを発表。社内で活用していた「商談準備AIエージェント」を提供することになるという。顧客名を入力すると関連する市場情報をまとめるほか、課題仮説を生成し、提案可能なソリューションを提示。提案資料のストーリーと想定QAを生成する。商談音声のAI要約アプリとの連動も予定しているという。
2025年度の主要戦略の1つ目である「業種業務課題を解決するデジタルサービス事業の拡大」では、「Windows 11」へのマイグレーションをきっかけに、中堅・中小企業へのデジタルトランスフォーメーション(DX)提案を加速。パートナーとの連携により、他社アプリケーションとも連動させた業種、業務、基幹業務のDXを促進する。
また、DXおよびグリーントランスフォーメーション(GX)の加速を見据えた複合機の提案を継続的に展開するほか、中堅、中小企業を対象にした多層防御によるセキュリティ提案を強化する。さらに、ワークプレイスエクスペリエンス(WE)領域のサービス展開などを通じて、「RICOH Smart Huddle」の展開をさらに加速させる。「コロナ禍後のオフィス移転、出社回帰に伴う需要を捉えたものになる」という。
「地域・社会課題解決に向けた価値提供領域の拡大」では、同社が提案している「脱炭素STEP」の展開を拡大するほか、自治体向けには、「GIGAスクール構想第2期」への取り組みを推進。ヘルスケアでは、介護および見守りシステムに加えて、医療DXにも積極的に取り組むという。

脱炭素STEP
「脱炭素STEPは、企業の脱炭素化への取り組みに対して伴走する提案であり、2024年11月時点では6000社が採用していたが、5月末時点では9500社に拡大している。実行フェーズに入った企業も1500社に達している。脱炭素化の取り組みは長期にわたるものであり、10年後、20年後まで、リコーが伴走できる関係を構築しているお客さまが既に約1万社いることになる。リコージャパンにとっても大切な取り組みといえる」などと述べた。
医療DXを支援する「RICOH Remote Field」
また、「医療DXでは、大学病院改革プランに対する支援サービスを提供し、まずは、経営改善の領域で貢献できる。地域医療の中核を担う大学病院のDXにデジタルサービスで貢献する」と述べ、既に、那須赤十字病院では、機微なデータを取り扱う医療業界の「退院サマリ」の作成に、オンプレミス大規模言語モデル(LLM)を活用しているほか、奈良県立医科大学附属病院のドクターカーでは、「RICOH Remote Field」を活用し、救急医療現場の情報連携を強化している例を示した。

那須赤十字病院へのオンプレLLM提供
3つ目の「高効率な市場カバレッジ体制の再構築」としては、コールセンター向けに、アウトバウンドとインバウンドの両面に基づくデジタル展開を強化するほか、自治体や地方銀行、信用金庫との連携協定に基づくビジネス展開を強化する考えを示した。
4つ目の「課題創造型体質への変革に向けたデジタル人財への投資拡大」としては、DXにおいて、主体的な行動および成果を挙げている「プロレベル3」以上の社員が2024年度までに8126人となったほか、延べ762人の各種スペシャリストを育成することに成功。これをベースに、2025年度にはプロ人材を9700人に拡大。さらに、「スマートハドルスペシャリスト」など、新たな分野特化型スペシャリストの認定も開始する。
笠井社長CEOは、「AIエバンジェリストとして、153人が社内認定されている。これに教育を受けた約150人を加えると、約300人のAI関連人材を育成できた。2025年度はさらにAI人材の強化を図る」と語った。
5つ目の「社内DXの加速と経営品質の向上」については、注文書をはじめとした全ての契約書面のうち、93%を電子化システムへと移行が完了。「電子契約の推進という点では、国内有数の企業になったと自負している」と胸を張った。2025年度は、ITサービス申込書など、残り7%の契約書を、電子化システムに移行するという。また、「AIの社内実践を本格化する1年になる」とも述べた。
一方、2024年度の成果としては、大手企業を中心にWindows 11へのマイグレーション需要を捉えた提案が拡大するなど、オフィスサービスビジネスがけん引。オフィスサービスの売上高が前年比13.6%増の4667億円となり、好調な実績を記録した。そのうち、ITインフラが前年比14%増、ITサービスが同15%増となったほか、アプリケーションサービスが同12%増となり、初めて1000億円を突破した。セキュリティ関連では、デジタルデータソリューション(DDS)との連携によるセキュリティサービスの販売実績が年間6000件弱に達したという。