パナソニック コネクト、SCM事業を本格化--「現場から始める全体最適化」

加納恵 (編集部)

2025-06-23 10:16

 パナソニック コネクトは6月20日、日本企業のサプライチェーンマネジメント(SCM)変革に向けた取り組みと戦略を発表した。グローバルで培われたベストプラクティス(成功事例)と日本の現場ニーズを融合させた「現場から始める全体最適化」を提供する。

 同社では、SCMソフトウェア企業のBlue Yonderを2021年、Zetesを2017年に買収し、グループに迎え入れた。この買収により、ソリューションラインアップと導入のケイパビリティーを大幅に強化。2024年には現場ソリューションカンパニー内にSCM事業センターを新設し、日本市場へのソリューション展開に本腰を入れる。

 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント 兼 現場ソリューションカンパニー プレジデントの奥村康彦氏は「世界を取り巻くサプライチェーンの状況は日を追うごとに複雑化、高度化している。そのような中で、労働力の不足、物流コストの上昇、社会の不安定化、環境問題への対応など課題は非常に多く、山積する一方」と現状を話す。

 奥村氏は、SCMには生産計画や需要予測といったサプライチェーン全体の物の流れの計画を管理する「計画領域」と、輸送や倉庫など現場のオペレーションを管理する「実行領域」の2つがあると説明。この2つの領域やそれぞれのプロセスをデータでつなぐことで、万が一課題が発生してもリアルタイムに的確な意思決定が下せるとする。

 今回の発表は、Blue YonderとZetesが展開するソリューションサービスが日本でも導入できるよう整備されたことを受けて実施したもの。加えて、これらのソリューションサービスを日本で提供するケイパビリティーが整ってきたためとする。

 パナソニック コネクトでは、Blue YonderやZetesの知見を生かし、物流の最適な業務フローを実現するベストプラクティスをソリューションとして提供していく方針。データをシームレスに連携できるように設計した物流ソリューション群で、倉庫や輸配送といった物流業務全体を横断的かつ包括的にサポートする。

 さらに同社が強みとして打ち出すのは、日本で45年にわたり物流ソリューション事業を展開してきた導入ノウハウだ。現場ソリューションカンパニー シニア・ヴァイス・プレジデント 兼 現場サプライチェーン本部 マネージングダイレクターの山名義範氏は「熟練作業者による経験則に沿った作業による属人的な運用や紙や手作業でデータをつながざるを得ない個別システムの乱立が現場の大きな業務負担になっている」と指摘。これらの課題を解決し、生産性を向上する手段として「業務フローの標準化」と「物流全体を横断するデータ基盤」の2点を挙げる。

業務フローの標準化
業務フローの標準化
データ基盤
データ基盤

 「私たちは世界中の多種多様な物流現場を長年にわたり見てきた中で、最も効率的な業務フローの成功事例を蓄積している」(現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部 SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏)とし、これらの成功事例がソフトウェアに組み込まれていると強調。導入事例として、業務スピードと精度向上により収益の改善につながったドイツのHenkelや労働生産性を35%向上させたメキシコのAccel Logisticsを紹介した。

 データ基盤については、人員計画、倉庫管理、在庫管理、配送計画、運行管理、配送進捗(しんちょく)管理、さらには返品管理まで、物流業務全体を同一の基盤上でシームレスに連携させるソリューションを提供していくとのこと。これにより、集配作業のリアルタイム可視化から、倉庫内の業務デジタル化まで、エンドツーエンドで物流全体の可視化とトレースにつなげる。

 具体的な導入事例として、福岡運輸(福岡市)が2023年に導入した配送進捗管理システムを挙げ、「ドライバーの集配作業可視化による問い合わせ対応時間の短縮やコミュニケーションの改善に結びついた」(小笠原氏)と紹介。同社では、2024年5月には倉庫実行管理システムも導入し、配送進捗管理システムとの連携で拠点間を含めた物流全体の可視化を進めているという。

 小笠原氏は「日本の現場を長く見てきた経験から『変えるべき運用』『残すべき運用』を見極める」とコメント。変えるべき運用については「人に依存して替えがきかないような業務は変えるべき。海外のベストプラクティスとして『Fit To Standard』で導入しているのは人が流動的だから。人が交代しても業務が回るようにすべき」(山名氏)と具体例を示した。

 奥村氏は「物流の現場に注力し、そのソリューションを強化していく。これによって『現場から始める全体最適化』を実現していきたい」と思いを明かす。「倉庫と輸配送、一つ一つの現場の業務のデジタル化に取り組み、データをつなげることで、拠点の物の流れが見えるようになる。それが複数拠点や企業間に広がっていくことで物流全体の流れが見える。見えてきた物流のデータを製造や流通へもつなげ、サプライチェーン全体の最適化を目指す」とした。

  パナソニック コネクトでは、プロダクトマネジメント、コンサルタント、システムエンジニア、営業、フィールドエンジニア、カスタマーサクセス、CoE(センターオブエクセレンス)などを担うSCM専門チームも発足。約700人体制で導入企業をバックアップしていく方針だ。

 2025年秋には、Blue Yonderによる倉庫管理ソリューションを導入する「NX・NPロジスティクス 舞浜倉庫」(千葉県浦安市)の稼働が控える。2030年までに50社の導入を目指す。

パナソニック コネクト 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント 兼 現場ソリューションカンパニー プレジデントの奥村康彦(中央)、シニア・ヴァイス・プレジデント 兼 現場サプライチェーン本部 マネージングダイレクターの山名義範氏(左)、現場サプライチェーン本部 SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏(右)
パナソニック コネクト 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント 兼 現場ソリューションカンパニー プレジデントの奥村康彦(中央)、シニア・ヴァイス・プレジデント 兼 現場サプライチェーン本部 マネージングダイレクターの山名義範氏(左)、現場サプライチェーン本部 SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏(右)

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