アカマイ・テクノロジーズは、同社のグローバルエッジインフラで提供しているクラウドサービス「Akamai Cloud」のアップデートについて説明会を開いた。AI推論用サービスや映像特化のVideo Processing Unit(VPU)を加えるなど、エッジ環境のAI機能を拡充している。

米Akamai Technologies クラウドコンピューティング担当フィールド最高技術責任者のJay Jenkins氏
Akamai Cloudは、2022年に買収したLinodeをベースに、世界4100カ所以上のポイントオブプレゼンス(PoP)を通じて提供するIaaS/PaaSのサービス。説明を行った米Akamai Technologies クラウドコンピューティング担当フィールド最高技術責任者(CTO)のJay Jenkins氏は、Kubernetesのマネージドサービス「Linode Kubernetes Engine」(LKE)が速く、コスト効果や拡張性に優れるなどの点が開発者に支持されていると述べた。
LKEでの直近のアップデートが、企業向けに機能拡張して提供する「LKE-Enterprise」(LKE-E)の強化になる。新たに専有型でコントロールプレーンやイングレスのリソースを提供するほか、最大500ノードのサポート、最大で10Gbpsスループットおよび1万同時接続など性能や拡張性を向上した。Virtual Private Cloud(VPC)の対応強化や、サードパーティー製ID・アクセス管理ツールの統合などセキュリティ面も強化した。

Linode Kubernetes Engine(LKE) Enterpriseの強化内容
Jenkins氏は、同社ではエッジAIの推論に注力しているとも説明した。大規模データセンターによるAI推論サービスが多い中で、同社はデータの発生源に近い場所(=エッジ)でAIを利用できるサービスをうたう。「2025年は、AIの実装と運用に着手する企業が非常に増え、推論実行のさらなる効率化やコスト効果を求めるニーズが高まっている。われわれは、AIへの(サイバー攻撃などの)脅威を防ぎながら、性能の改善とコストの削減に貢献する豊富な選択肢を提供している」(Jenkins氏)
直近では、AIデータプラットフォームを手掛けるVAST Dataと協業した。Jenkins氏によれば、これによりAkamaiのエッジ環境においてデータの効率的な分散展開やAIモデルの利用を最適なコストで信頼性高く実現できるという。

AI推論サービスの概要
AI推論のユーザー事例では、ゲーム会社がAkamai CloudのGPU機能を活用して低コストかつ高速なStable Diffusionの画像生成を行っているほか、自動車メーカーがAkamai Cloudを使ってインフォテイメントシステムでの音声AIアシスタントサービスを提供し、パイパースケーラーのサービスよりも安価になっているそうだ。
4月には、NETINTのVPU「Quadra T1U」による動画処理特化のサービスも開始した。Jenkins氏は世界初のVPUクラウドサービスと述べ、コストが競合のGPUを使う同種のサービスの約10分の1になるとアピールした。

世界初というVPUクラウドサービス
また、Jenkins氏に続いてアカマイ・テクノロジーズ シニアテクニカルソリューションアーキテクトの金児仁史氏が、Akamai Cloudのパートナー制度「Qualified Compute Partner」での連携サービスのアップデートを紹介した。
直近では、オンラインの仮想待合室サービスを提供するQueue-it、マルチメディアデータの管理や配信サービスを提供するCloudinary、クラウドネイティブアプリケーションを高速実行するウェブアセンブリーのFermyon、動画プラットフォームのHarmonicと協業し、連携サービスを新たに提供している。顧客ではPeach AviationがQueue-itのサービスを採用し、キャンペーン実施時のアクセス集中に伴うパフォーマンス低下の問題を改善しているという。

FermyonとAkamai Cloudによるアプリケーション実行の高速化