エンタープライズAIが本格化--デル、AI時代のインフラを展望

藤本和彦 (編集部)

2025-06-23 11:11

 デル・テクノロジーズは6月20日、報道向けに説明会を開き、5月に米国で開催された「Dell Technologies World 2025」と、そこで発表された新製品とソリューションについて振り返った。

 まず、常務執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏が、Dell Technologies World 2025について総括した。同氏は、主要なトピックとして「エンタープライズAIの本格化」「データの重要性」「AIワークロードの分散」――の3つを挙げた。

 同氏によると、エンタープライズでのAI活用は2024年から一部の企業で導入が始まっていたが、エンタープライズAIの本格的な活用が加速すると予測され、エージェントAIという新たな概念も議論されており、AIの進化は今後さらに多面的に広がっていくと考えているという。そうした中で、基調講演を含むさまざまな場面で、エンタープライズAIの重要性が強調されていたと話す。

 また、生成AIの活用により、企業の競争力の源泉となるデータの重要性がこれまで以上に強く認識された。さらに、AIのフェーズが学習から推論に移行するのに伴い、AIワークロードが分散され、エッジ、コア、クラウドといったさまざまな場所での活用と、分散・分離された環境での効率的な管理が重要視されているとした。

 なお、グローバル最高技術責任者(CTO)で最高AI責任者(CAIO)のJohn Roese氏は「エンタープライズAI」を「企業にとって最も重要な領域において、最も影響力の大きいプロセスにAIを活用することで、組織の生産性を向上させ、ひいてはビジネスの成長につなげていくこと」と定義する。

デル・テクノロジーズ 常務執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏
デル・テクノロジーズ 常務執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏

 その上で、企業がAIを活用するに当たっては、自社の最も重要な強みを正確に把握することが不可欠になる。その上で、AIによって得られる可能性のある飛躍的な成果を意識しながら、どのような課題を解決すべきかを明確にし、最適なソリューションの検討を進めていく必要があるとのこと。

 次に、AIの導入を成功させるためには、データの整備と活用体制の構築が重要になる。まずは、社内のデータが自由に活用できる状態にあるかを確認し、具体的なユースケースを特定。その上で、それらのユースケースに対応するために必要なツールの導入や開発を含めた、実行可能な戦略を立てていくことが求められる。「最終的な目標は、AIの導入によってどれだけの投資対効果(ROI)を生み出せるかを明確にすることだ」(藤森氏)

 基調講演から得られた重要なポイントとして、藤森氏はAI導入に関して「早期に着手することが極めて重要」だと強調した。現在では、AIに取り組まないこと自体が企業にとって競争上のリスクとなりつつあるという。また、AIの活用に当たっては、必ずしも最新のハードウェアを必要とするわけではなく、ユースケースに応じて柔軟なシステム構成で十分に対応可能であることも指摘された。

 さらに、AI導入の初期段階では、投資収益率(ROI)が明確に期待できる分野から着手することが効果的だと話す。このようなアプローチにより、具体的な成果を得ることで成功体験を積み重ね、社内におけるAIへの理解と推進力を高められる。また、特にデータ主権の確保といった要素も踏まえながら、コストと運用効率の両面を考慮した戦略的な運用が求められるとした。

 「デル・テクノロジーズは、もともとコンピューターの民主化から始め、現在ではAIの民主化を推進している。われわれは、テクノロジーの民主化に長けていると自負している。したがって、お客さまに対してAIをより身近なものにし、エンタープライズAIの活用推進を支援していきたい」(藤森氏)

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