ガートナージャパンは6月23日、国内企業のIT調達の取り組みに関する調査結果をした。ITリーダーの8割はIT調達を重要視しているが、満足度は低いという。
今回の調査は企業の調達部門が直面する課題や今後の戦略的方向性を明らかにするもの。
「IT調達業務を実施するための付加価値別の重要度」については、「価格(支出)の抑制」や「ITベンダーに対する交渉力」を「非常に/ある程度重要である」に挙げる企業が多い一方、「IT製品/サービスに対する見識/目利き」「ユーザー・ニーズの理解」にも高い関心を示した。
「現在のIT調達業務に対する満足度」を尋ねると、「IT製品/サービスに対する見識/目利き」「ユーザー・ニーズの理解」を挙げる企業が多い結果となった。

IT調達業務を実施するための付加価値別の重要度
シニア プリンシパル アナリストの弓浩一郎氏は「今回の調査で特に重要度と満足度の乖離(かいり)が大きかった項目は、『(ITベンダーが提示する) 価格 (支出) の抑制』。この背景には、ここ数年で顕著となっているソフトウェア/クラウド・サービス・ベンダーによる値上げがあると推察される」とコメントしている。
一方、IT調達業務に関して、組織的にどのように取り組むべきかを尋ねた質問では、「IT組織へ集中化すべき」(43%)、「事業部門へ分散化すべき」(28%)、「集中と分散を併用すべき」(29%)、に回答がほぼ三分されたとのこと。

現在のIT調達業務に対する満足度
今回の調査はITリーダーを対象としていることから、自身の責務とされる「集中」指向が最も多かったと推察できるものの、それでも「集中」への回答は半数を割り込んでおり、必ずしもIT組織がIT調達を担うべきと考えているわけではない現状が浮き彫りになった。
弓氏は「組織的な指向の差を生む要因の1つとして容易に想像できるのは、IT調達に割ける人材の不足。特にその中のIT調達要員は増強投資の優先順位が低く、数的な劣位が業務品質の質的な劣位を引き起こすという悪循環から抜け出せていない。結果的にIT調達の遂行を半ば諦めているか、事業部門を含めIT組織の外にアウトソースせざるを得ないのが実情と考えられる」とした。
Gartnでは、「集中」「分散」の指向の差は、人材不足のような「受動的」な要因以外に、積極的に「分散」を指向する「能動的」な要因もあるとみており、その1つに挙げられるのはデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みとする。
今回の調査で、調達体制別のDXを主導する組織を尋ねると、総じて「IT組織へ集中化すべき」と回答している企業はIT組織が主導している割合が最も多く(49%)、逆に「事業部門へ分散化すべき」と回答している企業は非IT組織主導でDXへの取り組みを推進する傾向が強いことが明らかになったという。
また、現在のIT調達体制に関係なく、IT組織は、DXへの貢献に今後より注力したいと考えていることも明らかになっているとし、弓氏は「ITのソーシング/調達/ベンダー管理 (SPVM) のリーダーは、DXの推進に対するIT組織の役割に応じて、IT調達機能をデザインすることが重要。それには次の4つに取り組む必要がある」とした。

調達体制別のDXを主導する組織に関するサーベイ結果
弓氏が挙げたのは、(1)IT組織内のIT調達業務を棚卸しし、人材の充足度と調達業務の集中・分散の各メリット、デメリットとを勘案しながら、IT組織内で実施すべきIT調達業務の優先順位を付ける、(2)IT組織への調達業務の集中化にこだわらず、IT組織外のリソースの活用可能性を検討し、調達業務の分担/移譲の有効性を非IT組織と精査する、(3)IT調達業務を非IT組織に分散移譲する場合でも、調達に関する規範やプロセスのガイドライン、製品/サービスのセキュリティ基準等はIT組織主導で策定し、事業組織へ周知/徹底を図る、(4)調達先の企業プロファイルや他社実績はもとより、過去の交渉における実績・経験・知見・反省等を組織横断的に共有し参照できるナレッジ・ベースを構築し、価格などの交渉力の底上げを図る――の4つになる。
「IT調達体制の指向に関係なく、メリットを最大化しデメリットを最小化する方策を策定し実行する必要がある。SPVMは、特に技術革新が急速に進む時代において、あらゆる組織に不可欠な戦略的な能力であり、重要性が高まっている。SPVMのリーダーは、企業での影響力を高めてDXへの貢献に向けた取り組みを進める必要がある」とした。