読者の皆さんは、早朝や深夜、さらには週末に仕事をすることがどれくらいあるだろうか。メールの返信にしても、レポートのチェックや会議への出席にしても、就業日に終わりがないように思えることは多い。このリモートワークとハイブリッドワークの時代においては、なおさらそう感じられるだろう。少なくとも、あるテクノロジー大手は、そうした苦しみに気づいているようだ。
Microsoftは、新しいレポート「Breaking down the infinite workday」で、終わりのない就業日が多くのビジネスパーソンを苦しめる現状とその理由を説明した。米国時間6月17日にリリースされたこのレポートは、同社が少し前に発表した「2025 Work Trend Index Annual Report」の続報だ。前回のレポートでは、AIエージェントと人間のハイブリッドチームが仕事を管理する「Frontier Firm(フロンティア企業)」という概念が取り上げられた。
今回の新しいレポートでは、さまざまな「Microsoft 365」製品(「Outlook」「Microsoft Teams」「Microsoft Office」など)がいつ、どのように使用されているかを分析した。その目的は、典型的な就業日の時間帯と長さを調べることだ。この匿名化された分析で、生産性を阻害する要因が、いつまでも終わりそうにない就業日であることが明らかになった。多くのビジネスパーソンの就業日がどのようなものか、具体的に見ていこう。
終わりのない就業日
就業日は往々にして午前6時に始まる。40%の人はメールを確認して、その日に待っているタスクに優先順位を付ける。平均的な労働者は1日に約117通のメールを受信するが、そのほとんどを60秒以内に流し読みする(次に誰かにメールを送るとき、このことを覚えておこう)。1対1のメールはこの1年間で5%減少したが、20人以上の受信者に一括送信されるメールは7%増加した。
午前8時ごろには、Microsoft Teamsがメールに代わって主要なコミュニケーション手段となる。平均的な労働者が1日に受信するTeamsメッセージは約154通だ。この数字は、全世界では過去1年間で平均6%増加したが、中欧や東欧、中東、アフリカなどの地域では、20%増だった。英国と韓国では15%増加した。
最初のメールやメッセージを全て片付けたら、本格的な作業に打ち込む時間だ。いや、その前に会議がある。
Microsoftの分析では、会議の半数が午前9~11時と午後1~3時に開催されている。理にかなった時間帯に思えるかもしれないが、過去の研究で、まさにこの時間帯に生産性が急上昇することが明らかになっている。それらの時間帯を会議に使うより、デスクの前で、集中力を求められる困難な作業や、やりがいのある作業に注力した方がいい。
さらに、会議自体が以前より退屈なものになった。同レポートによると、約57%の会議はカレンダー招待がなく、急に設定されているという。予定された会議にも、直前になって設定されるものもある。最も急速に増加しているのは、65人以上が参加する大規模な会議だ。約3分の1の会議には、複数のタイムゾーンの人々が参加する。
昼休憩の後には、多くの従業員が「Word」「Excel」「PowerPoint」などの生産性アプリを開く。ようやく、文書の作成、データの分析、プレゼンテーションの準備などの作業に取り組める時間だ。しかし、ここでも時間が細切れになる、とMicrosoftは指摘する。作業が平均で2分おきに、メール、通知、臨時会議によって中断される。
さて、午後5時になった。仕事を終える時間のはずだが、そうはいかない。データは、就業日がまだ続くことを示している。例えば、午後8時以降に開かれる会議がこの1年間で16%増加した。主な理由は、グローバルでフレキシブルなチームが、世界のさまざまな場所にいる人を参加させようとしていることだ。また、従業員は通常の勤務時間の後に平均で50通以上のメッセージを受信している。午後10時までに、29%の人が受信トレイに戻ってきて、最新のメールを確認する。
ともあれ、やっと週末がやって来た。仕事のことを忘れて、リラックスできる時間だ。しかし、本当にそうだろうか。約20%の従業員が、土曜日と日曜日の正午までにメールをチェックしている。約5%は日曜日の午後6時以降に再びメールを見る。ほぼ同じことが繰り返される次の1週間に備えるためだ。
仕事中毒の社会や文化においても、終わりのない就業日は狂気の沙汰だ。より生産的に費やすべき仕事の時間を奪うだけでなく、従業員の疲労や燃え尽き症候群を招くことになる。その悪影響は従業員自身だけにとどまらず、経営者にも及ぶ。
どうすればこの問題を解決できるのだろうか。Microsoftは、人工知能(AI)、特にAIエージェントにもっと頼ることを提案した。筆者は、AIに期待をかけ過ぎのように思うが、同社の見解に耳を傾ける価値はある。
「80:20の法則」(パレートの法則)に従う
活動は進歩と同じではない。忙しいだけで、適切なタスクや目標に取り組んでいないなら、仕事をする意味などあるだろうか。これに関して、Microsoftはパレートの法則を採用するように薦めている。これは、20%の作業によって成果の80%を生み出すという考え方だ。
これがAIにどう関わってくるのだろうか。AIエージェントを使用して、進捗(しんちょく)会議や定期報告、事務作業といった価値の低いタスクを処理する。これにより、従業員の時間を解放して、人間の関与を必要とする深いタスクに注力できる。Microsoftはこれに関して、「Microsoft 365 Community Conference」での同社幹部による基調講演「未来の企業を築く」を視聴するように薦めた。