日立産業制御ソリューションズは、OT(制御技術)分野の熟練者が持つ暗黙知を抽出し、既存の技術資料や一般知識といった形式知と統合することで、「OTナレッジ」として体系化した。これは、上下水を含む7つの業務分野にわたるものであり、今後さらにその範囲を拡大していく方針である。6月24日に発表した。
体系化されたOTナレッジは、同社の生成AIプラットフォーム「GAP-AI」(Growth Acceleration Platform with generative AI)に蓄積される。OTナレッジの利用を設計業務プロセスに組み込むことで、熟練者の暗黙知継承を通じた人材育成と、設計業務の生産性向上を推進する。2027年度までに、OT分野の制御系設計業務の生産効率を2024年度比で30%改善することを目指している。
OTナレッジの体系化は、まず1業務分野当たり約半年をかけ、熟練者集団がディスカッション形式で取り組んだ。このディスカッションでは、ファシリテーターが主導し、熟練者が当然と認識しているOTナレッジと設計に関する思考プロセス(設計手順)を、暗黙知として表出化させた。最終的に表出化された暗黙知は、既存の形式知とともに、設計フェーズごとにOTナレッジとして体系化された。
体系化されたOTナレッジは、Amazon Web Services(AWS)のクラウド環境上に構築されたGAP-AIに蓄積される。これにより、分野特有の略語に対する十分な理解がなくても、制御系設計ナレッジの検索や利用が可能となる。今後はGAP-AIを活用し、OTシステムの複数プロセスを並行して設計するアジャイル的な設計を実現することで、迅速かつ柔軟な対応が求められる現代のものづくりに最適なアプローチを目指す。
同社によると、GAP-AIが扱えるデータは現在のところテキストベースのみだが、マルチモーダルAI技術の導入を進めているという。具体的には、2024年度から日立製作所のGenerative AIセンターと共同で、画像検索技術の開発と図面検索への応用に取り組んでいる。

暗黙知表出化の概念イメージ