OpenAIがハードウェア事業に正式参入することを発表したのは、5月のことだった。その際、最高経営責任者(CEO)のSam Altman氏は「X」に投稿した動画で、「iPhone」などのフラグシップ製品を手掛けたAppleの元デザイナーJony Ive氏と提携し、ioという名のスタートアップ企業を通じて次世代の人工知能(AI)搭載デバイスを開発する計画を明らかにしていた。
しかし、この計画が早くも暗礁に乗り上げているようだ。
OpenAIは米国時間6月24日、この提携に関する情報をインターネットから削除した(本稿執筆時点で、上記の動画を除く)。同社は当初の発表ページを更新し、次のように説明している。「『io』という名称の使用に関するiyOからの商標権侵害の申し立てを受けた裁判所の命令により、このページは一時的に公開を停止しています。当社はこの申し立てに同意しておらず、現在対応を検討中です」
OpenAIを提訴したiyOとは
商標権侵害を申し立てたのは、「iyO ONE」などのAI搭載ウェアラブルデバイスを開発するiyOだ。同社のウェブサイトによれば、iyO ONEは「画面のないコンピューター」をコンセプトとしたイヤホン型デバイスで、スマートフォンと同じようにアプリを実行できるほか、ユーザーの自然言語による指示を受け付けるという。Bloomberg Lawも、このiyOが商標権をめぐってOpenAIを提訴したと報じている。
Ive氏が設立したioは、AIデバイスに特化したスタートアップで、その名はほとんど知られていない(この社名も過去のものとなるかもしれないが)。Altman氏は、約65億ドル(約9400億円)相当の株式交換で同社を買収した際、ノートPCやスマートフォンのように日常的に使われるAIコンパニオンデバイスを構想していると明かしていた。また、この事業の一環として、Ive氏と同氏のデザイン会社LoveFromのスタッフは、独立した立場を維持しつつ、OpenAIでクリエーティブな役割を担うことになっていた。
事業はまだ進行中
BloombergのMark Gurman氏はXの投稿で、今回のトラブルにもかかわらず、事業は依然として進行中だと述べている。
The Jony Ive and OpenAI deal is on track and has NOT dissolved or anything of the sort, I’m told. Here’s what happened: they were sued over the name IO and there was a restraining order issued by the judge. They had to pull all materials with the name. https://t.co/JfAxPXrC5R
— Mark Gurman (@markgurman) June 22, 2025
「ioチームはこれまで、人々に刺激や活力、可能性を与える製品の開発に力を注いできた。今後はOpenAIと合併することで、サンフランシスコにいる研究、工学、製品のチームとより密接に協力することになる」と、OpenAIは合併に関するブログ投稿(現在は公開停止中)で語っていた。この投稿には詳しい情報がほとんどなかったが、Altman氏とIve氏は、「ChatGPT」のような製品機能を、従来のウェブやテクノロジー製品のインターフェースを通じて利用するより、シームレスで直感的に利用できるユーザー体験の提供に焦点を当てているようだ。

提供:Chip Somodevilla/Getty Images
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。