STT GDC、日本進出--印西に最新データセンター「STT Tokyo 1」開業

加納恵 (編集部)

2025-06-26 10:17

 シンガポールのデータセンター企業であるST テレメディア・グローバル・データセンターズ(STT GDC)は6月25日、日本国内初となるデータセンター「STT Tokyo 1」を開業した。千葉県印西市に位置する戦略的な立地を生かし、北東アジアにおけるプレゼンスを強化する。

「STT Tokyo 1」外観
「STT Tokyo 1」外観

 STT GDCは、シンガポール政府直下の投資会社であるTemasekの完全子会社。英国に17拠点、インドに30拠点をはじめ、日本を含む12カ国、100を超えるデータセンターを展開している。

 「英国、ドイツ、イタリアなど欧州にかなり注力しているほか、30拠点のデータセンターを構えるインドでは、Tata Communicationsと戦略的提携を結んでおり、ジョイントベンチャーとして事業をスタートしている。そのほかの拠点でも各国の企業と提携しているケースが多い」(STT GDC 代表取締役社長の前田潔氏)と事業基盤を紹介する。

 日本においては、2021年に参入を発表。データセンターの集積地として知られる印西市に建設した理由については「印西市は海底ケーブルのランディングステーション(海底ケーブルの拠点)から近く遅延が少ない。加えて非常に安定した地盤を持ち、災害などのリスクも低い」(前田氏)と述べた。

 STT Tokyo 1は、物流センターやデータセンターが並ぶグッドマンビジネスパーク(GBP)内に位置する。2027年11月には、現在建設中の「STT Tokyo 2」が立ち上がる計画で、2棟の延べ床面積は合計6万平方m。合計で70MWのIT容量をサポートする。

 建設時には、30m以上の杭を合計で90本、地中に打ち込んでおり、高い堅牢性を確保。耐震構造はベアリングを用いて、揺れを吸収する「球面滑り免振」を採用しているという。

 STT Tokyo 1は、4フロア構成で、12のデータホールを持ち、最大ラック数は339ラック。壁面に設置されるファンと冷却装置を組み合わせた「ファンウォールユニット」を導入し、空冷対応になる。だが、サーバーラック内の冷却装置(CDU)に水を供給する仕組みを構築しており、水冷方式も導入できるよう設計しているとのこと。「お客さまのニーズに合わせた柔軟な対応ができることが強み」(前田氏)とする。水冷方式を使用する際は、水を循環して使うため、多くの水を必要とせず、環境に配慮する。

 ネットワークの接続性では、ランディングステーションに近いという地の利に加え、4カ所から独立した経路でネットワークを引き込み、冗長性を確保する。前田氏は「完全に独立した4系統を確保しなければならず、難易度は高いが、今のハイパースケーラーの要件を満たすには取り組まなければならないもの」とした。

 同日にはオープニングセレモニーが開かれ、多くの来賓が訪れた。駐日シンガポール共和国特命全権大使のONG Eng Chuan氏は「シンガポールと日本は長年にわたり深く多面的な関係を築いており、経済協力はその中核を成す要素。このデータセンターは、シンガポールの投資家が新たなフロンティアに挑む一例であり、デジタル時代におけるより緊密な協力関係の構築に向けた一歩になる。今回の新たな一歩が、両国間の強固な関係をさらに深める契機となることを確信している」とコメントした。

 一方、印西市長の藤代健吾氏は「シンガポールは恐らく世界で一番環境政策が進んでいる国の一つ。STT GDCの皆さんも、その環境をまず優先するという中で、今回カーボンニュートラルを実現されると思っている。データセンターは日本にとっても、また印西市にとっても大事な産業。自治体として私たちができるサポートを十分にしていきたい」と話した。

 STT Tokyo 1では、運用開始の初日から「スコープ1」「スコープ2」の排出量においてカーボンニュートラルを達成しているとのこと。外壁照明、電動自動車(EV)充電ステーション、送水ポンプなどに太陽光発電システムを活用するほか、省エネ設計を組み込み、世界最高レベルの電力使用効率(PUE)を実現しているという。STT GDC全体では、2030年までに全世界のデータセンターでカーボンニュートラルの達成を目指す。

 STT GDC プレジデント兼グループ最高経営責任者(CEO)のBruno Lopez氏は「日本への進出は戦略的な大きな節目。SST Tokyoは、単なる新しい施設というだけではなく、企業の可能性を引き出し、経済成長を促し、日本の今後のデジタル化に貢献したいという当社の思いを象徴する存在」と思いを込めた。また、日本のことわざである「一期一会」を例に挙げ「一つ一つの出会いは二つとない貴重なもの。皆さまと共に成長できるこの機会が非常に重要だと考えている」とコメントした。

 1号棟に関しては、既に多くの問い合わせがあり満床に近い状況とのこと。STT GDCでは、データセンターに関する運用を、ほぼ社内スタッフが賄う「内製化」も推進しており、オーナーシップ意識の向上やデータの透明性の確保などを目指し、高品質なサービスを提供していく方針だ。

テープカットも行われた。左から、STT GDC プレジデント兼グループ最高経営責任者(CEO)のBruno Lopez氏、駐日シンガポール共和国特命全権大使のONG Eng Chuan氏、印西市長の藤代健吾氏、STT GDC 代表取締役社長の前田潔氏)
テープカットも行われた。左から、STT GDC プレジデント兼グループ最高経営責任者(CEO)のBruno Lopez氏、駐日シンガポール共和国特命全権大使のONG Eng Chuan氏、印西市長の藤代健吾氏、STT GDC 代表取締役社長の前田潔氏)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]