松岡功の「今週の明言」

NTT Com幹部が語った「中堅・中小企業向け生成AIサービス展開の“先”」

松岡功

2025-06-27 10:35

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、NTTコミュニケーションズ 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長の本髙祥一氏と、Akamai Technologies Cloud Computing, Field CTOのJay Jenkins氏の「明言」を紹介する。

「AIエージェントでは“パーソナルエージェント”の提供も検討していきたい」
(NTTコミュニケーションズ 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長の本髙祥一氏)

NTTコミュニケーションズ 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長の本髙祥一氏
NTTコミュニケーションズ 常務執行役員 ソリューション&マーケティング本部長の本髙祥一氏

 NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の本髙氏は、同社が先頃開いた中堅・中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する生成AIサービスについての記者説明会で、AIエージェントへの進展について聞いた筆者の質問に、上記のように答えた。ワーカー(社員)個々人に帯同してさまざまなAIエージェントがつながって動く世界の窓口になり得る「パーソナルエージェント」の役どころも狙うつもりがあるとの意思を示したので、明言として取り上げた。

 NTT Comはドコモグループの社員アイデアを事業化する新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」からスピンアウトしたSUPERNOVAと連携し、中堅・中小企業のDXを支援する生成AIサービス「Stella AI for Biz」を提供開始した。

 同社は新サービスを投入した背景について、「人手不足への対応、売り上げ向上、新たな価値創造など、多様な目的のもと生成AIの法人ユースは急速に拡大している。しかし、業務で生成AIを活用しようとする現場では、『どの生成AIを契約すべきかわからない』『利用の定着や導入後に十分に活用できるか不安』『環境構築が大変』といった導入および活用における多くの課題が存在する。とくに中堅・中小企業では生成AIの活用効果が高いとされている一方で、これらの課題から導入が進んでいないという状況がある」 と説明。本髙氏は、「利用の意向に前向きな企業が多いが、踏み出せないのが導入課題」との見方を示した(図1)。

(図1)中小企業における生成AIの利用状況(出典:NTT Comの会見資料)
(図1)中小企業における生成AIの利用状況(出典:NTT Comの会見資料)

 新サービスの内容については関連記事をご覧いただくとして、以下では冒頭の明言に注目したい。

 ちなみに、本髙氏がAIエージェントについて触れたのは新サービスの説明の最後で、「今後はAIエージェントの展開も視野に入れている」とのことだった。筆者が会見の質疑応答でAIエージェントの進展について聞いたのはこの発言があったからだ(図2)。

(図2)中小企業における生成AIの今後の展開(出典:NTT Comの会見資料)
(図2)中小企業における生成AIの今後の展開(出典:NTT Comの会見資料)

 AIエージェントについては、業務・業種アプリケーションベンダーをはじめ、ITサービスベンダー、ハイパースケーラーなどが、それぞれのスタンスでソリューションを打ち出している。中でも先行しているのは業務・業種アプリケーションベンダーで、AIエージェントによってそれぞれの既存製品の機能強化を図っている。ユーザー企業としてもまずはそれらを個別に使っていくのが、AIエージェント活用の取っ掛かりになりそうだ。

 一方で、筆者が注目しているのは、ワーカー個々人に帯同するパーソナルエージェントが台頭してきた場合だ。パーソナルエージェントが窓口となって、各業務をはじめとしたさまざまなAIエージェントとつながっていく世界が創り上げられていくのではないか。現時点では、そうしたパーソナルエージェントはまだ出現していないが、今回の新サービスが中堅・中小企業に広がり、それがパーソナルエージェントへと進化すれば、NTT Comにとって大きなビジネスチャンスになるだろう。

 そうしたことを踏まえて「パーソナルエージェントの役どころも狙うつもりがあるか」と質疑応答で聞いたところ、冒頭の明言に記したように「検討していきたい」との答えが返ってきた。若干、勢いで答えた感じもしたが、それでも前傾姿勢は示した格好だ。

 サービスの内容もさることながら、筆者がこの動きを注視しているのは、このほどのNTTグループの大再編により、NTT Comは7月1日から「NTTドコモビジネス」としてドコモの法人事業を担う形となり、これまで以上にNTTグループの事業戦略として展開されるようになると見ているからだ。NTT Comは業務・業界特化型AIエージェントについても先頃発表しており、AIエージェントへの注力ぶりがうかがえる。

 ただ、この分野は間もなくNTTの完全子会社となるNTTデータも注力しており、NTTグループとしてどうユーザーから見て分かりやすいビジネスの形にしていくか、注目されるところだ。

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