製造業のサーキュラーエコノミーへの変革を支援--アビームら5社が新たな取り組み

國谷武史 (編集部)

2025-06-30 16:44

 三井住友ファイナンス&リースとアミタ、アビームコンサルティング、サーキュラーリンクス、GXコンシェルジュは6月30日、サーキュラーエコノミー(循環型経済)による製造業のサステナビリティー(持続可能性)経営への変革を支援する取り組み「Circular Co-Evolution」の提供を開始すると発表した。

 Circular Co-Evolutionでは、製造業のサステナビリティー経営を企画構想、変革実現、運用改善の3段階で、経営戦略の再設計からサプライチェーンの再構築、実務レベルでの資源循環や再資源化、ファイナンス、デジタル変革(DX)まで一気通貫で支援する取り組みになる。

「Circular Co-Evolution」の提供イメージ
「Circular Co-Evolution」の提供イメージ

 各社の役割は、三井住友ファイナンス&リースがアセットホルダーの機能およびDXソリューション「assetforce」の提供、アミタが循環型事業の開発に向けた概念実証の実行支援や循環型サプライチェーンの構築支援(サステナブル調達など)、資源循環や再資源化の設計と実行の支援、アビームコンサルティングが製造業の業務改革やDX、ビジネスモデル変革など企業全体の変革実行支援、サーキュラ―リンクスが廃棄物管理のシステムおよびビジネスプロセスアウトソーシング、循環型サプライチェーンマネジメントシステムの開発、GXコンシェルジュがサステナビリティー経営の構想立案支援や環境価値の可視化、ESG(環境・社会・統制)戦略の設計となる。

「Circular Co-Evolution」における各社の役割
「Circular Co-Evolution」における各社の役割

 5社では、製造業を中心に今後3年間で100社へのソリューション提供を目指す。特に資源循環や脱炭素への対応を経営課題とする企業を対象としており、今後は経営層や実務担当者向けのセミナー、個別相談会なども開催。企業のニーズに応じた具体的なプロジェクト支援を展開していくとしている。

サーキュラーリンクス 代表取締役社長の田部井進一氏、アミタホールディングス 代表取締役 会長 兼 CVOの熊野英介氏、三井住友ファイナンス&リース 代表取締役専務執行役員の関口栄一氏、アビーム コンサルティング 執行役員の山中義史、GXコンシェルジュ 代表取締役社長の栗林亘氏(左から)
サーキュラーリンクス 代表取締役社長の田部井進一氏、アミタホールディングス 代表取締役 会長 兼 CVOの熊野英介氏、三井住友ファイナンス&リース 代表取締役専務執行役員の関口栄一氏、アビーム コンサルティング 執行役員の山中義史、GXコンシェルジュ 代表取締役社長の栗林亘氏(左から)

 同日の発表会に登壇したアミタホールディングス 代表取締役会長 兼 CVOの熊野英介氏は、製造業を含むあらゆる産業がサーキュラーエコノミーへ変革する必要性を強調した。同氏は、規模や価値の連続的な拡大を追究するこれまでの資本主義が構造的な限界に直面していると指摘。背景には、資源の枯渇や気候変動、地政学的影響などにより安定調達の限界が表面化し、格差や高齢化、雇用不安などにより社会的な限界も顕在化しているとする。資本を支える金融も実体経済とかけ離れる状況が生じており、企業では根本的なビジネスモデルの変革に迫られていると説明した。

 さらに熊野氏は、こうした世界的な動向を踏まえ、多くの資源や市場を海外に依存している日本の産業変革が重要になるとも述べる。日本は経済大国化からバブル経済崩壊後の低成長から脱却できないままでいる中で、とりわけ製造業が旧来のビジネスモデルに固執していることにより産業の空洞化が進んでいるとする。そこでサーキュラーエコノミーの新たなビジネスモデルに変革し、国内需要を再び拡大することで、日本の産業成長の道筋になると語った。

 ただ、複雑な既存のビジネスモデルを個社で変革するのは極めて難しく、多様なエコシステムを通じてさまざまな企業が共に進化する「共進化(Co-Evolution)」のアプローチにより変革を実行、推進していくことが将来への「唯一の羅針盤だ」と述べた。そこで今回、5社が「Circular Co-Evolution」を立ち上げたという。

 三井住友ファイナンス&リース 代表取締役専務執行役員の関口栄一氏は、これまでReduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)を推進し、2023年には脱炭素化やサーキュラーエコノミーを推進する社内ワーキングチームを立ち上げたと説明。しかし、企業単独でサーキュラーエコノミーを実現するのは困難だとし、2025年に約250人体制の「地球環境部門」を設立、サーキュラーエコノミーをエコシステムで推進していく座組み作りをスタートさせたという。

三井住友ファイナンス&リースにおけるサーキュラーエコノミーへの変革支援事例
三井住友ファイナンス&リースにおけるサーキュラーエコノミーへの変革支援事例

 今回対象とする製造業は、長らく資源を調達して新製品を大量生産するビジネスモデルだったが、サーキュラーエコノミーでは、資源や製品の再利用など循環型の仕組みへの大きな変革を伴うことから同社のような企業の役割も大きい。実際に同社が支援したリース会社の事例では、利用が終了した製品を整備・再利用して2次需要家や3次需要家に供給したり、再資源化したりする取り組みを開始しているという。

 アビームコンサルティング 執行役員の山中義史氏は、直近5年間の平均企業時価総額が5000億円以上の大手製造146社の分析から、73%がサーキュラーエコノミーを経営課題に位置付け、45%が中期経営計画の見直しを実施していると指摘した。また、気候変動への対応では、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)排出の31%を製造業関連が占め、多くの企業がサプライチェーンでのCO2排出の削減に取り組むものの、さらなる推進にはサーキュラーエコノミーへの変革が重要になると指摘した。

5社における製造業などの変革支援事例
5社における製造業などの変革支援事例

 山中氏もサーキュラーエコノミーへの変革は、企業の経営や事業の構造自体に大きな変化をもたらすと述べる。しかし、今回協業5社それぞれのケースでもこれまでに多くの変革支援の実績があるとし、5社連携の多様な支援を通じて最終的に日本の製造業の変革に寄与したいと抱負を語った。

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