Meta、人工超知能の開発に向け新研究部門「MSL」を設立

Webb Wright (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2025-07-02 08:47

 Bloombergは米国時間6月30日、Metaが人工超知能(ASI)の開発に特化した新たな社内の研究開発(R&D)部門を設立したと報じた。

 「Meta Superintelligence Labs(MSL)」と呼ばれる新部門は、Scale AI 元最高経営責任者(CEO)のAlexandr Wang氏とGitHub 元CEOのNat Friedman氏が率いる予定だ。CNBCが入手したMark Zuckerberg CEOの社内メモによれば、同部門にはOpenAI出身のエンジニア7人も加わるという。Metaによるこの新部門の設立計画は6月に報じられていた。

 Zuckerberg氏は社内メモで、「AIの進化が加速する中、超知能の実現が現実味を帯びてきた」と述べている。また、「これは人類にとって新たな時代の幕開けになると確信しており、Metaはその道を切り拓くために必要なあらゆる手段を講じる覚悟だ」と強調した。OpenAI CEOのSam Altman氏も最近のブログ投稿で同様の見解を示し、OpenAIは何よりも「超知能の研究機関」であると位置付けている。

 続いて、MSLの中心的な使命については「全ての人に個別の超知能を提供すること」だと述べている。この目標は、テクノロジー業界でよく見られるように、壮大な理想を掲げつつも、その具体的な内容は依然として不透明である。

 ASIは、一般的に人間の脳の能力をはるかに超えるコンピューターシステムのことを指す。この技術は、ほぼ全ての仕事で人間並みの成果を出せるとされる人工汎用(はんよう)知能(AGI)から、さらに一歩進んだものと考えられている。

 AGIと同様に、ASIも現時点では完全に仮説上の概念であり、広く受け入れられた統一的な定義は存在していない。この言葉は、オックスフォード大学の哲学者であるNick Bostrum氏が出版した著書「スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運」によって広く知られるようになったもので、主にAIの制御不能な進化に伴うリスクへの警鐘として用いられている。

 Zuckerberg氏は社内メモで、「全ての人に個人的な超知能を提供する」という構想の具体的な内容については明言を避けたものの、MSLが同社の大規模言語モデル「Llama」シリーズやスマートグラス部門と連携しながら進化していく可能性を示唆した。

 MSLに参加している元OpenAIのエンジニア全員が、同社の「o」シリーズモデルの開発に関与していたという事実から見て、新設部門が推論モデルの開発を最優先事項とするのはほぼ確実だ。この分野は、Metaが描く超知能のビジョンを実現するための長期的な戦略の中核を成す可能性がある。

 MetaをAI分野のリーダーに位置付けようとするZuckerberg氏の強い意志は、同社が競合企業から優秀な人材を積極的に引き抜こうとしている最近の動きからも明らかだ。Altman氏は、Metaが自社の従業員に対して1億ドルの契約ボーナスを提示したと述べており、これはシリコンバレーの水準を超える破格の金額である。ただし、ある元OpenAIエンジニアは先ごろ「X」に投稿し、この報道を「フェイクニュース」と否定している。

 Metaはこの動きにおいて孤立しているわけではない。AIへの投資と期待が高まる中、主要なテクノロジー企業のほぼ全てが、業界で最も重要な資源とされるトップ人材の獲得にしのぎを削っている。競争力を強化するため、多くの企業が小規模なAIスタートアップの買収にも乗り出しており、AppleがAI検索企業Perplexityの買収を検討しているとの報道もある。

 一方で、業界で豊富な経験を持つ専門家たちは、テクノロジー大手企業において高額報酬のポジションを得ているが、AI分野では、若手や経験の浅いエンジニアが採用されにくくなっている傾向も見られる。

提供:Vincent Feuray / Hans Lucas / Hans Lucas via AFP/Getty Images
提供:Vincent Feuray / Hans Lucas / Hans Lucas via AFP/Getty Images

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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